2013 Fiscal Year Research-status Report
コンパッション・セラピーによる認知行動変容の比較文化研究
Project/Area Number |
25380944
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
有光 興記 駒澤大学, 文学部, 教授 (10341182)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | セルフ・コンパッション / コンパッション・セラピー / 認知行動療法 / 抑うつ / 不安 / 自己批判 / 比較文化研究 |
Research Abstract |
本研究は,コンパッション・セラピーに関する比較文化的研究を行い,日本人にとって重要な介入方法を考案し,その治験を行うことを目的とする。平成25年度は,自己批判への肯定的スキーマに関する尺度を作成した。 方法 参加者 大学生171名(女性=59.0%,平均年齢19.6歳,範囲18-27歳)。 手続き 予備調査として,大学生146名を対象として自己批判に関するポジティブな考え,ネガティブな考えを自由記述してもらった。その結果を踏まえて,41項目からなる自己批判スキーマ尺度を作成し,大学生を対象に実施した。その他,自尊心尺度,Self-compassion Scale,特性不安尺度,自己評価式抑うつ尺度,人生満足感尺度,自己否定思考尺度,the Weekly Diary of Self-Critical Thoughts ,抑うつ的反すうに関するポジティブな信念尺度,反すうに関する肯定的信念尺度に回答を求めた。 結果 自己批判スキーマ尺度の因子分析(重み付きのない最小自乗法, promax回転)を行ったところ,自己向上(14項目,α=.93),悪化回避(12項目,α=.88)という2つのポジティブ信念とネガティブ信念(6項目,α=.90)の合計3因子が得られた。自己批判に関する信念3因子について,他の2因子を制御変数として各尺度との偏相関を求めた。その結果,自己批判に関する信念は,自尊心,不安,抑うつの低減につながる自己向上,逆にそれらを高めてしまう悪化回避,ネガティブ信念という特徴があることが明らかになった。以上の結果は,コンパッション・セラピーにおける自己批判の扱い方について示唆を与えている。すなわち,自己批判によって自己向上が可能という信念については介入は必要ないが,悪化回避やネガティブ信念については治療過程で扱う必要性がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は,予定通り自己批判に関する信念尺度の開発を行うことが出来た。しかしそれ以外に,尺度を利用した介入も行う予定であったが,CFTプログラム自体を調査の結果を受けて修正していく必要があり,準備に予想以上に時間がかかり,予定通り研究2まで進めることができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
目的 本年度は,自己批判スキーマについて欧米での調査を実施し,日本におけるデータと比較する。 方法 参加者 大学生,成人200名程度(アメリカ在住者)。 手続き 平成25年度において作成した自己批判的スキーマ尺度を英訳し,大学生,成人に実施する。同時に,Fear of Compassion Scale(Gilbert et al., 2010),特性不安尺度(Spielberger, 2000),ベック抑うつ尺度(Beck et al., 2003),Self-compassion Scale(Neff, 2003),Forms of Self-Criticism/Self-Reassuring Scale(Gilbert et al., 2004),自己愛人格目録(小塩, 1998),Rosenberg自尊心尺度(10項目, 5件法;山本他, 1982),相互独立的―協調的自己観尺度(Markus & Kitayama, 1991; 高田他, 1996),Social Problem-Solving Scale-Revised(D’Zurilla,2002)を実施する。 結果の予測 自己批判のネガティブなスキーマは,日本と同様に不安や抑うつと正の相関,自尊心,自己愛,セルフ・コンパッションとは負の相関を示すことが予測される。しかし,自己批判についてのポジティブなスキーマも,欧米ではネガティブに捉えられるため,不安や抑うつを悪化させる要因となることが予想される。なお,平成26年度は,ボストン大学に所属しており,欧米でのCFTの臨床的介入について実践を行う。その成果を次年度で開発するプログラムに適用すると同時に,次年度で公表していく予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
残金となった予算は,人件費として支出予定であったが,病欠などで休みが発生し予定どおり支出ができなかった。 本年度に繰り越した分については,人件費として使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)