2014 Fiscal Year Research-status Report
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25380946
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
大貫 敬一 東京経済大学, 経済学部, 教授 (40146527)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ロールシャッハ・テスト / 対象関係 / 発達評価 / 把握型 |
Outline of Annual Research Achievements |
ロールシャッハ・テストによる対象関係の発達評価方法としては、MOAやRODなどの対象関係尺度を用いる方法の他、人間表象反応指標を用いる方法、Leichtman(1988)のロールシャッハの3段階、Friedman(1952)によるWaやW+などの把握型により発達水準を捉える方法、Meili-Dworetzki(1953)によるロールシャッハ反応が複雑さと分化を増す図式、Klopfer et al.(1954)による陰影反応に示される愛情欲求の成熟や分化の程度を捉える方法などが知られている。 本年度は、これらのうちロールシャッハ反応の把握型について研究を進めた。研究の第一段階として、非患者成人データを用いて把握型の特徴を検討した。 日本では1950年代に日本人のロールシャッハ・テストの基準データが作成されたが、その際、アメリカ人のデータと比較したときの日本人成人のW優位、つまり、D%と比較してW%が高いことが指摘された。今年度の研究では、現代日本人成人においてもW優位の傾向があるかどうかを確かめるため、340名の非患者成人データを用いて把握型の特徴を調べた。ロールシャッハ・テストは片口法(修正クロッパー法)で施行されている。その結果、以下のことが見いだされた。1)W%(cut-off Wを含む)がD%よりも高い被験者が3分の2以上である、2)カードⅡ、Ⅵ、Ⅸ、ⅩなどのW反応を出しにくいカードでもW%が高い。この結果は、現代日本人成人においても、刺激野を分析的・現実的にとらえるより全体的に捉える傾向が特徴的であることを示していると考えられる。また、この傾向は、現実場面においては、例えば、対人知覚や対人行動を特徴づけていると推測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ロールシャッハ・テストを用いた対象関係の発達評価に関するこれまでの研究として、まず、代表的な対象関係尺度であるMOA(Mutuality of Autonomy)の研究を継続的に行った。MOAは、英語版であることから評定や解釈が難しく、また、諸研究によって尺度の未解決な点も指摘されている。そこで、この尺度を検討して日本人被験者を対象として使用可能にするための研究にかなりの時間を費やした。次に取り組んだ、ロールシャッハ・テストの把握型に関する研究も、従来のわが国での研究や諸外国のデータとの比較が必要なため、研究結果を出すまでにかなりの時間を費やしている。そのため、少しずつ研究の進展が遅れているのが実情である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究を踏まえて、最終的な研究目的である対象関係の発達評価尺度を作成する。対象関係発達評価尺度は必ずしも1つの尺度に構成できるものではないが、以下のような尺度と指標の構成となると考えている。 (1) MOA日本語版ガイドラインによる対象関係の発達評価、(2) 人間表象反応指標による現実的な対人関係の良好さに関する評価:指標として、① 図版Ⅱ、Ⅲ、Ⅶの人間像P反応の有無による評価、②H%、または、Pure H、H : (H)+Hd+(Hd)などを用いる。(3) 認知と情緒の成熟や分化の発達評価:基礎となる理論である、①Leichtman(1988)のロールシャッハの3段階、②Friedman(1952)の把握型、③Meili-Dworetzki(1954)の認知や情緒が複雑さと分化を増す発達過程、④Klopfer et al.(1954)の愛情欲求の成熟と分化を示す陰影反応の発達過程、などを統合した発達評価。
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Causes of Carryover |
国際学会での発表・渡航費用等が想定ほどかからなかったこと、購入予定の洋雑誌のバックナンバー・洋古書が想定よりも高価であったため購入を控えたこと、などの理由により、次年度への繰り越しが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データの入力作業費用、国内学会での発表費用、Journal of Personality Assessmentのバックナンバーの購入費用等に使用予定。
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