2013 Fiscal Year Research-status Report
脳科学から見た箱庭療法:近赤外分光法(NIRS)によりその治療的機序を探る
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25380953
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Toyo Eiwa University |
Principal Investigator |
秋本 倫子 東洋英和女学院大学, 人間科学部, 准教授 (70410157)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 箱庭療法 / 近赤外分光法 / 臨床心理学 / 脳科学 / 脳血流 / social interaction |
Research Abstract |
本研究の目的は、臨床心理学と脳科学を組み合わせ、脳機能の測定法である近赤外分光法(near-infrared spectroscopy; NIRS)を用いて、箱庭療法の治療機序を探ることである。 その方法として、申請時には、「箱庭制作に不可欠な、箱、砂、水、ミニチュアの各変数を順次投入するという手続きで箱庭制作中のクライエント役被験者とセラピスト役被験者の両方の脳血流をNIRSによって計測し、計測中(箱庭制作中とその後のインタビュー)のビデオデータと併せて検討するとした。しかし、検討の後、箱庭療法が心理療法であるからには、クライエントとセラピストの間の関係性あるいは非言語的・言語的な相互作用(social interaction=社会的相互作用)が最も重要であると考えて、クライエント役とセラピスト役の相互作用に焦点を絞ることにした。計測部位は、前頭前野に加えて一次運動野に当たる可能性が高いところにチャンネルを設定し、一人あたり16チャンネルとした。セラピストの一次運動野、下前頭回に当たる領域がミラーニューロン・システムにより反応するのではないかとの仮説を立てた。砂に触る、ミニチュアを置く、等をイベントとする事象関連デザインとした。 今年度中は、クライエント役6名、セラピスト役6名を対象に、クライエント役が10分間ミニサイズの箱庭で箱庭制作をしている間、セラピスト役が見守り、制作終了後5分間のインタビューをセラピストがクライエントに行うという形で実験を行った。箱庭制作開始からインタビュー終了までを通してNIRSによる脳血流計測を行った。実際には、インタビューに至る前に中止を希望した被験者が3名いた。 データについてはまだ解析途中であり、解決すべき問題も多いので確実なことは言えないが、今回の被験者については、多くの場合、箱庭制作中の脳血流はセラピスト<クライエントであり、インタビュー時になって、双方ともの脳血流が増加する傾向が伺われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
資料収集や連携研究者、研究協力者との検討の結果、研究計画を変更した。実験を実施する場所などの関係もあり、実験を実施するのが平成26年3月末となったため、データはまだ解析途中である。NIRSによる実験の技術習得もまだ十分ではなく、アーチファクトが多いなど、データに問題がある。外光が入ると計測ができないため、今回は部屋を薄暗くして実験したが、自然な箱庭療法の場面とは異なる。データにも影響した可能性がある。運動野はアーチファクトが多く、計測は困難だった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.計測技術に習熟するよう、研究代表者、研究協力者らがトレーニングをもっと積むことが必要である。 2.被験者がうつ向くことで脳血流が増加している可能性があるので、姿勢を一定に保てるように、様々な工夫を試みる。 3.アーチファクトが解消されない場合は、計測部位を前頭前野に絞り、箱庭を介してのセラピストとクライエントの相互作用を、前頭前野の脳血流を通して検討するという形にする。 4.部屋を明るくした状態で、より自然に近い形での箱庭制作ができるようにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.当初購入する予定であった。脳血流と作業動作解析システム(多目的観察ビデオカメラとその周辺機器、運動解析ソフト)を購入しなくても、東京都医学総合研究所の設備で目的に添った実験を行うことがほぼ可能と判断されたため。 2.実験の開始が遅れ、被験者に支払う謝礼の額が少なくなったため。 1.研究会での謝礼 2.国内・国外出張旅費 3.被験者への謝礼 4.研究所のビデオカメラに不具合がある(画面が鮮明でないなど)ので、ビデオカメラを購入する可能性がある。5.実験環境を整えるために、テーブル、椅子等を購入する可能性がある。
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Research Products
(2 results)