2014 Fiscal Year Research-status Report
実存的グループ療法によるがん患者の心理的苦痛改善プロセスと無効例の検討
Project/Area Number |
25380960
|
Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
河瀬 雅紀 京都ノートルダム女子大学, 心理学部, 教授 (70224780)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 臨床心理 / 癌 / 心理療法 / 実存的苦痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、がん患者286名に実施したニーズ調査を基に、実存的苦痛・スピリチュアルペインに焦点付したグループ療法プログラム(河瀬ら:がん患者 グループ療法の実際:金芳堂.2009)を作成した。本研究では、乳がん患者を対象にこのグループ療法プログラムを用いて有効性を確認するとともに、心理的苦痛が改善するプロセスを明らかにし、また、グループ療法の効果が乏しい群についてその要因を明らかにすることを目的としている。 平成26年度も引き続きPOMS短縮版、SELT-M、MAC、日本語Big Five尺度を用いて、プログラム実施前後および実施1か月後に評価を行い、MAC「絶望感」が高い群でSELT-M「全体QOL」の改善が確認できたため、その結果を第16回国際サイコオンコロジー学会にて発表を行った。一方、独立変数として反芻スタイル尺度、不確実さ不耐性尺度(SIUS)を加えたグループ療法については、研究倫理審査委員会による承認を得て実施を進めている。また、グループ療法による効果が乏しい群について質的な評価を行うため、平成26年度はグループ療法により心理的変化が見られた事例を抽出した。すなわち、変化を妨げる「自己や世界に対する中核的な信念や価値観」などより内面的な課題に気づき、過去についての語りなおしから信念・価値観の修正が行われ実存的苦痛の緩和へと至るパターンが見出された(第29回医学会総会にて発表)。そこで、グループ療法の会話記録を用いて修正版グランデッド・セオリーにより実存的苦痛が緩和するプロセスの分析を進めている。さらに、本グループ療法プログラムで十分な効果が得られない一群に対して新たなプログラムを付加するために、他のピアサポートプログラムとの比較を開始した。すなわち、研究倫理審査委員会の承認を得て、イベントを特徴とするピアサポートプログラムに携わったがん患者の心理的変化について同様の質的分析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
質的調査のための症例数は得られたが、一方、量的調査については、新たに申請した研究実施施設での参加者数が十分に得られず、分析が可能となる症例数に至っていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
心理的苦痛の改善が乏しい要因を探るため、質的調査の多元化を図る。すなわち、1つは、本グループ療法プログラムにより心理的苦痛が改善するプロセスについて、修正版グランデッド・セオリーを用いた質的分析を完成させる。同時に、異なった形態をとるピアサポートプログラム参加者を対象に、同様の質的調査を実施する。そして両者の比較により、本グループ療法プログラムとは異なる心理的苦痛の改善プロセスを明らかにし、実存的苦痛の緩和を目的としたグループ療法の効果を高める要因を検討する。一方、量的調査については、グループ療法の実施場所・時期や実施頻度などについて、参加者の利便性を高められるよう工夫を図る。
|
Causes of Carryover |
質的データの分析を主に2015年度に行うこととなり、2014年度に購入を予定していたデータ分析用の統計ソフトの費用および人件費を次年度に使用することとなったため。また、2014年度に予定していた国内学会発表の一部を2015年度に発表することとしたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の補助金の使用計画は、消耗品費(統計ソフト等)430千円、国内旅費(国内学会参加2回程度)100千円、外国旅費(国際学会参加および情報収集2回程度))600千円、人件費・謝金(実験補助等)243千円、その他(交通費、通信費等)160千円である。 なお、国際学会は、2015年度に国際サイコオンコロジー学会(米国・ワシントン)での発表を予定している。
|