2015 Fiscal Year Research-status Report
遺族のニーズのアセスメントとそれに基づく心理社会的介入に関する研究
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25380966
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
坂口 幸弘 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (00368416)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 死別 / 遺族 / アセスメント / サポートグループ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、過年度に引き続き、文献調査研究や現状把握研究を進める一方で、遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメント方法として現在開発中のBereavement Risk Assessment Tool(BRAT)の日本語訳版を用いた調査研究と介入研究を試行的に実施した。 調査研究は、昨年度から継続している調査で、葬儀社が主催する遺族のサポートグループに参加した遺族のリスクアセスメントである。運営スタッフの協力を得て、延べ115名の参加遺族に関してBRATによるアセスメントを行った。結果として、トータルリスクスコアは0~78点で、平均8.6点であった。5段階のリスクレベルのうち、レベル5 (64点以上)が1.7%、レベル4(16-63点)が19.1%、レベル3(4-15点)が12.2%、レベル2(1-3点)が27.8%、レベル1(0点)が39.1%であった。今回の結果から、当該サポートグループの参加遺族のリスクレベルは全体的に低い一方で、一定の割合で高いリスクレベルの遺族が混在していることが示唆された。 介入研究は、今年度新たに実施した試みであり、遺族のサポートグループの効果について、BRATによるアセスメントを交えて検討した。サポートグループへの参加遺族5名(女性、平均72.3歳)を対象に、会の前後においてPOMS、血圧、脈拍、唾液アミラーゼを測定し、会終了後には会の評価について尋ねた。ファシリテーターによるBRATを用いたアセスメント結果は、全員がリスクレベル1の「既知のリスクはない」であった。主な結果として、POMS得点を比較したところ、【抑うつ-落ち込み】【疲労-無気力】【緊張-不安】【活気-活力】での改善が認められたが、一方で参加遺族の一部において【怒り-敵意】【混乱-当惑】の悪化も見られた。会についての評価に関しては、回答を得られた4名全員が、会に参加して良かったと思うと回答した。リスクレベルの低い遺族においても、サポートグループの一定の効果が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究目的であった「研究2 遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメント方法の開発」に関して、昨年度からの調査を継続し、信頼性や妥当性の検討を行うことができた。「研究1 遺族のニーズやリスク、および遺族への介入に関する現状把握」に関しても自治体での遺族ケアの実態調査など継続的に調査を進めている。「研究3 遺族のニーズに応じた各種心理社会的介入プログラムの開発とその効果の検証」については、時期を前倒しして試行的に実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も、過年度からの葬儀社での調査を継続し、BRATの日本語訳版の信頼性や妥当性、ならびに有用性に関する検討を行う。また遺族のニーズや介入の現状把握に関する研究の一環として、昨年度から進めている自治体での遺族ケアに関する実態調査を行う予定である。また並行して、遺族のニーズに応じた心理社会的介入の試みとして、リーフレットの作成などを予定している。
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Causes of Carryover |
今年度の支出額が当初予定よりも大幅に少なかった主たる理由は、遺族や関係団体を対象とした大規模な質問紙調査を実施せず、それに伴う印刷費や郵送費等の支出がなかったためである。また今年度の調査研究や介入研究に関して、調査協力者のご厚意で謝金が不要であったことも、大幅な残額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度使用しなかった助成金の使用計画として、関係する施設や団体を対象とした遺族へのニーズや介入等に関する現状把握の調査を予定している。調査方法は質問紙調査もしくは面接調査とし、それに伴う印刷費、郵送費、交通費、謝金等の支出を見込んでいる。また、次年度分として請求した助成金については、当初の予定通り、遺族のニーズやリスクを把握するためのアセスメント方法の開発や、遺族のニーズに応じた各種心理社会的介入プログラムの開発に向けて、研究協力者や協力機関との研究打ち合わせ旅費が必要である。調査の実施にあたっては、研究協力者への謝金や、調査用紙の印刷費および郵送費が必要である。加えて研究資料として、死別に関連する書籍の購入費用が必要である。
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