2013 Fiscal Year Research-status Report
高速逐次視覚呈示(RSVP)を用いた視覚的注意の比較心理学的研究
Project/Area Number |
25380977
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
實森 正子 千葉大学, 文学部, 教授 (80127662)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 比較認知心理学 / 視覚的注意 / 高速逐次視覚呈示 / 動物認知 |
Research Abstract |
ヒトの注意研究で用いられる高速逐次視覚呈示(RSVP)課題では、高速逐次呈示される刺激系列の中から標的刺激を抽出して報告する方法がとられる。こうした実験パラダイムが動物ではまだ確立されていないため、RSVPを用いた動物における注意研究は、手付かずのままになっている。本研究は、動物に適用可能なRSVP課題を開発し、高速で飛行するハトのような動物に高速視覚処理を可能にしている視覚的注意のメカニズムを明らかにするために計画された。初年度は、実験方法の確立を目指した。 実験1:2項目RSVP訓練が行われた。訓練最終段階では、試行開始と同時に呈示された十字図形へ反応すると、標的刺激(予め定めた2つの鳥画像のどちらか一方)と妨害刺激(それ以外の鳥画像)からなる系列刺激が呈示された。系列刺激の終了と同時に選択刺激(赤と緑の四角)が呈示され、標的刺激の弁別が求められた。刺激呈示時間を438ミリ秒(ISIは17ミリ秒)にまで短縮しても精度の高い標的刺激の弁別が維持されていた。 実験2:各項目の呈示時間を483ミリ秒に固定したまま、3項目のRSVP課題(標的刺激1つ、妨害刺激2つ)を行った後、極限法を用いて呈示時間を徐々に短くした。どの呈示時間でも、標的が系列の3番目にある試行に比べて1番目と2番目にある試行の正答率が低くなった(系列位置効果)。チャンスレベルを有意に上回る正答率が示された最短の刺激呈示時間は、標的が系列の1番目と2番目にある試行では183ミリ秒、3番目にある試行では133ミリ秒だった。 これらの結果から、ハトは高速逐次呈示される系列刺激の中から、標的刺激を抽出できることが明らかになった。 実験3:妨害刺激の効果を検討するために、妨害刺激の代わりにブランクを呈示する試行(標的のみ呈示)を混ぜて再訓練した。高い正答率が維持され、系列刺激やブランクを次第に短くするテストの準備ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始以前に行った予備実験において、2項目RSVP課題をハトが学習できることをすでに確認していたため、実験1の実施が容易になった。実験1では、標的刺激呈示時間を予備実験と同様の1秒から次第に短くしたが(妨害刺激呈示時間は483ミリ秒に固定)、予想以上に弁別精度が高く維持され、短期間の訓練で目標とした483ミリ秒にまで短縮することができた。実験2では、刺激系列中に妨害刺激を2つ含む3項目課題を訓練したが、ハトは予想したよりはるかに優れた弁別行動を示した。特に、系列の最後に呈示された3番目の画像を、ハトは極めて短い呈示時間(平均133ミリ秒)でも視覚処理できることが明らかになった。この結果は、これまでにない新しい発見であった。
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Strategy for Future Research Activity |
実験1と2は当初の計画通り行われ、ハトにRSVP課題を適用するためのノウハウが確立された。実験3は、妨害刺激の効果を明らかにするために計画された。現在は、テスト前に必要な訓練をほぼ完成した段階にある。今後は、系列刺激やブランクを次第に短くし、通常の3項目RSVP試行における成績との比較を行う。このテストによって、標的だけを呈示したときの限界呈示時間についても査定することができる。 また、当初の計画通り、新たなハトに対して、標的刺激とは異なるカテゴリから妨害刺激を選び(標的として用いた鳥以外の花、車、人など)、RSVP課題におけるカテゴリの効果について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
毎年3月にアメリカで開催される関係学会に出席する予定だったが、都合により出席することができなかった。そのため、特に外国旅費から次年度使用額が生じた。 本人および連携研究者の学会参加費として使用する。
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