2014 Fiscal Year Research-status Report
高速逐次視覚呈示(RSVP)を用いた視覚的注意の比較心理学的研究
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25380977
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
實森 正子 千葉大学, 文学部, 教授 (80127662)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 比較認知心理学 / 視覚的注意 / 高速逐次視覚呈示 / 動物認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度(平成25年度)に開発したハト用RSVP課題では、十字図形の呈示で試行が開始した。それをハトが突くと、標的刺激(2つの鳥画像のどちらか一方)と2つの妨害刺激(標的以外の鳥画像)が高速逐次呈示された。刺激系列が呈示された後、選択刺激(赤と緑の四角)が呈示され、標的刺激の弁別が求められた。 本年度の実験1では、妨害刺激の効果を検討するために、通常のRSVP試行とTarget-only試行を同一セッション中で訓練した。後者では、妨害刺激のかわりにブランクが呈示された。訓練完成後、各刺激の呈示時間を次第に短縮しながら、2種類の試行の正答率を比較した。刺激呈示時間約80ミリ秒までは正答率に差がなく、RSVP試行における妨害刺激干渉効果が認められなかった。刺激呈示時間が80ミリ秒以下になると、RSVP試行の正答率はTarget-only試行に比べて顕著に低減した(妨害刺激による干渉効果)。このことから、ハトが個々の刺激の視覚処理を完了するのに要する時間は、約80ミリ秒であることが推定された。 さらに実験1では、Target-only試行においても、RSVP試行と同様の系列位置効果が見られた。この原因を探るために、実験2ではブランクの数と時間および標的刺激の挿入位置を組織的に変化した。その結果、試行開始から標的が出るまでの時間と標的が出てから選択刺激が出るまでの時間の両方の効果がみとめられた。前者の効果は比較的弱いが、前者が長く後者が短いほど正答率が高い。 実験3では、実験経験のないハトを用いて、標的刺激と妨害刺激の類似性効果を検討した。標的刺激は実験1や2と同じ鳥画像、妨害刺激はそれ以外の鳥画像の他に、車の画像を用いた。呈示時間80ミリ秒以下で、鳥妨害試行において正答率が低くなる傾向を示した個体がいたものの、鳥妨害試行と車妨害試行の正答率に顕著な差が認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実験1では、これまでにない大きな発見があった。ハトはRSVP試行において高速逐次呈示される画像を約80ミリ秒で処理できることが分かっただけではなく、Target-only試行では標的刺激呈示時間を最短の17ミリ秒(モニタの1フレームに相当)にまで短縮しても、チャンス・レベルの50%より統計的に有意な正答率が得られた。この事実は、標的刺激が出終わっても、その後に妨害刺激が呈示されなければ、ハトは標的刺激の視覚処理を継続できることを示している。これは、ヒトで見出されている視覚的持続(visual persistence)と類似の現象だと考えられ、予想を超える新しい発見であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度見出された視覚的持続を検証するための実験を予定している。これまでの実験では、刺激間間隔を17ミリ秒に固定していた。実験1と同様のRSVP課題において、刺激間隔および刺激呈示時間(すなわちSOA)を組織的に変化する。等しいSOAにおいて、刺激呈示時間が長ければ、次の刺激が呈示されるまでの時間が短くなる。逆に、刺激呈示時間が短ければ、次の刺激までの時間が長くなる。刺激呈示時間が80ミリ秒より短く、視覚処理が完全に終了する前に標的刺激が消えた場合、ハトは次の刺激呈示までの空き時間を利用して標的の処理を持続するのだろうか?26年度の実験1で示された視覚的処理の持続が可能なら、SOAが80ミリ秒以上の場合、標的が実際に呈示されている時間にかかわらず高い正答率が得られることが予想される。 また、26年度に明らかにできなかったカテゴリ効果について、妨害刺激がとつぜん新奇なカテゴリ画像になった場合の妨害効果を見ることによって、検討を加える。
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Causes of Carryover |
毎年3月末に開催されていた国際会議が年度を超えた4月に変更されたため、出席できなかった。そのため、特に外国旅費から次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでの成果を1つの英語論文にまとめる予定だったが、26年度の実験1で予想外の興味深い発見があったため、2つの英語論文としてまとめる。1つはすでに執筆を開始したが、論文校閲や文献整理などにかかる経費が、当初の計画よりも大きくなることが予想されるので、それに当てる。また、連携研究者の学会参加費として使用する。
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