2014 Fiscal Year Research-status Report
潜在学習事態における能動的構えと学習効率に関する研究
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25380990
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
遠藤 信貴 近畿大学, 総合社会学部, 准教授 (00454869)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 潜在学習 / 構え / 視覚的文脈 |
Outline of Annual Research Achievements |
特定の認知・手続き的課題を繰り返し行うことで課題成績は徐々に向上するが,これは,課題の効率的な遂行に有用な手掛かりの潜在学習によって説明される。複数の視覚刺激の中から特定の標的を探索させる視覚探索課題において,固定レイアウトの反復経験により標的の探索時間は短縮されるが,これは標的の呈示位置の手掛かりとなるレイアウトの規則性(文脈手掛かり)を潜在学習した結果として解釈されている。また,文脈手掛かりの潜在学習は,連続する行為(反応)系列においても確認されており,先行試行の固定レイアウトと後続試行の標的位置の規則性が文脈として学習され,後続試行の探索処理を促したと考えられている。本研究の目的は,潜在学習事態における学習者の構えに注目し,特に,学習者に選好反応を求めることによって構築される能動的構えと潜在学習の生起との関係を検討することである。平成26年度は,無意味輪郭図形を用いた視覚探索課題において,あらかじめ決められた標的(閉図形)を複数の妨害刺激(開図形)の中から探索させる条件(受動的構え)と,複数の開図形の中から形の良さを基準にした選好反応させる条件(能動的構え)を設け,連続する試行間での標的位置関係の文脈学習の生起を条件間で比較した。その結果,先行試行の標的位置を含む固定レイアウトと後続試行の標的位置の文脈学習はいずれの条件においても生起した。次に,先行試行と後続試行の標的位置関係のみを固定し,妨害刺激のレイアウトはランダムにすることにより,試行間の文脈手掛かりの強度を低下させた事態において,文脈学習の生起を条件間で比較した。その結果,選好反応を求める能動的構えにおいてのみ文脈学習が生起した。以上の結果は,潜在学習事態における能動的構えは,試行間の文脈手掛かりの獲得を促し,強度が弱い文脈手掛かりであってもその利用可能性を高めることを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度の研究実施計画は概ね達成されているが,潜在学習事態における学習者の注意分布の変化を含めた検討は途中段階であり,十分行われていない状況である。これは本年度実施した複数の実験でのデータ収集に当初の見込み以上の時間を要したためである。これについては,現在も継続的に実験を進めることで対応している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は,今年度の結果を踏まえ,能動的構えによる任意の運動生成パタンに基づく文脈の潜在学習に焦点をあてた研究を展開する。なお,平成26年度の研究から,学習者の課題遂行時における方略的な構えも学習の生起パタンの変動要因の1つであることが確認されたため,この点についての検討もあわせて行う。
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Causes of Carryover |
平成26年度に購入した眼球運動測定装置1台,実験用コンピュータ2台の見積額に若干の誤差が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験実施およびデータ解析のための諸費用(具体的には実験参加者,実験補助者,データ解析補助者への謝金),研究成果の発表を行うための学会旅費の支出が主な使用計画である。
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