2013 Fiscal Year Research-status Report
大脳皮質および海馬の発生学的細胞構築異常と小児の行動異常に関する神経行動学的研究
Project/Area Number |
25380994
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Himeji Dokkyo University |
Principal Investigator |
杉岡 幸三 姫路獨協大学, 医療保健学部, 教授 (90112127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高瀬 堅吉 東邦大学, 医学部, 講師 (80381474)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 注意欠陥多動性障害 / 脳の発生学的形態異常 / 反射 / 活動性 / 学習障害 / 海馬 / 大脳皮質 |
Research Abstract |
本研究は、学習、注意また活動性などの機能に深く関与する海馬および大脳皮質の機能不全に焦点をしぼり、ラット胎生15、17、19日齢(それぞれM15群、M17群、M19群)に、神経毒性を有するメチルアゾキシメタノール(MAM)を投与することによって、脳の発生学的形態異常を有するADHDもしくはLDモデル動物を作成し、これらの動物に対して、新生児期から成体期に至る様々な時期に、種々の実験パラメーターを用いた多面的行動分析を行うとともに脳の組織学的分析を行った。1)新生児期に分析した正向反射・背地走性では、雌雄のM17群の反射獲得の遅延が観察された、2)離乳期でのOF事態での活動性の分析では、雄のM17群が寡動傾向を示したが、若齢期および成体期では群間に差異はなかった、また3)恐怖条件付け後の、装置に対する文脈記憶を凍結行動を指標として分析したところ、雌のM15およびM17群の凍結行動表出時間は短く、参照記憶の障害を示した。所定の行動実験終了後に測定した脳重は、M15群では対照群の83%、M17群では91%、M19群では95%であった。脳の組織学的分析では、1)M15群では皮質の層構築異常および海馬錐体細胞層の層構築異常および異所性の細胞集塊が観察され、2)M17群では皮質第II層の発達不全が観察された。以上のことは、本研究のM15およびM17群の行動学的結果のいくつかがADHD児で観察される注意欠陥・学習障害と類似するとともに、これらの行動異常が脳の皮質および海馬の発生学的形態異常と関係する可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
行動学的分析は予定通りすべて行うことができたが、脳の組織学的検索は概ね終了しているものの、まだすべての分析は行えておらず現在も進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も、本年度と同様に、MAMを胎生期の様々な時期に投与することによってADHDもしくはLDモデルラットを作成し、本年度と同様な一連の行動分析、さらにPPI課題を用いて注意欠陥の可能性について分析し、その中で、著しい行動異常(顕著な反射遅延、多動性、注意欠陥(PPI)および学習・記憶障害)を示したラット脳について、前頭前野から小脳までの完全連続切片を作成して、髄鞘およびニッスル顆粒を同時染色して純形態学的に光顕で観察する。さらに、大脳皮質第IIおよびIII層の特異的マーカーであるカルビンジンを用いて免疫染色を行い、層構築の異常との関連についても分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、予定していた脳の形態学的検索に遅れが生じたため、それらの検索に必要な薬品その他の購入を控えたためである。 上記の理由にも記載したように、次年度に繰り越した研究費は脳の形態学的検索に早急に使用する。脳の形態学的検索は離乳期から成体期に至る、それぞれの発達時期ごとに行う。
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Research Products
(2 results)