2014 Fiscal Year Research-status Report
自己名に対する自動的反応の時系列解析と脳機能評価への応用
Project/Area Number |
25380996
|
Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
荒生 弘史 大正大学, 人間学部, 准教授 (10334640)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 認知 / 注意 / 聴覚 / 音声 / 自己名 / 事象関連電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、昨年度選定した人工音声に加え、特色のある人工音声を刺激として用いた実験を実施した。手法はこれまでのものを踏襲し、被験者は視覚課題(ゲーム)に集中し、呈示される音声は無視するものであった。音声は自己名と他者名およびモノの名前とし、自己名の出現確率を1/8とした。これらの刺激をオッドボールパラダイムの様式で呈示し、脳波を記録した。被験者全体の結果は、荒生他(2012)で報告したデータと比較的よく似ており、前頭・前額部を中心に、自己名に対してより陰性方向の電位変動がみられた。過去のデータと今回のデータとでは、実験場所および記録システムが異なっているが、類似の結果が得られたことになる。このことは、実験の再現性・安定性の面で有用な情報であり、旧型アンプを活用した以前の実験においても十分な精度で測定可能であったことが間接的に示された点でも有用といえる。さらに重要なことには、類似のパラメータと実験状況を用いると、当パラダイムにより、研究機関や機材を問わず、同様の結果が得られる可能性が高いことが考えられる。できるだけ高い再現性・安定性を確保することは、本手法に基づく臨床応用技法を開発するうえで重要であり、これらのデータ取得が貴重なステップとなったと言える。なお、被験者個別にデータを視察すると、被験者により、どのタイプの音声の際に自己名と他者名のコントラストが生じやすいかが異なる傾向が見受けられた。引き続き、被験者ごとの個人差の問題あるいは測定誤差の問題も想定したうえで、自己名認識過程の検討とその臨床応用を考慮する必要がある。平成26年度9月には、国際学会(17th World Congress of Psychophysiology)において、これまでのデータをとりまとめ、シンポジウム発表を実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの成果をもとに、国際学会シンポジウムにおいて2件の発表を実施したほか、昨年度選定した人工音声を中心とした新規実験において、新たなデータを取得している。新規データについても、これまでとの整合性を確認できる部分に加え、音声の種類等の効果など新たな着眼点を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに実施してきた実験データを統合して取りまとめつつ、補足および新規の実験を実施し、事象関連電位にあらわれる自己名検出に関わる処理についての知見を整理する。特に、それが実験パラダイムに依存すること、感情や音声の効果とどのように相互作用するか等がハイライトになると考えられる。さらに、これらの情報をもとに各手法の長所短所を洗い出し、臨床応用に資する「自己名検出過程に関する事象関連電位指標」の効果的な取得法について検討を進める。
|