2014 Fiscal Year Research-status Report
諸外国における教員評価の「有望モデル」に関する横断的研究
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25381013
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
勝野 正章 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (10285512)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 教員評価 / モデル / 国際研究者交流 / 国際情報交換 / 米国 / ノルウェー |
Outline of Annual Research Achievements |
ノルウェーの生徒による授業評価を積極的に組み込んだ教員評価モデルと米国の教員の職能成長と目的とした教員評価のPAR(Peer Assistance and Review:同僚教師による支援と評価)モデルに焦点を絞り、文献の収集及びレビューとともに、それぞれの国での聴き取り訪問調査を実施した。訪問調査の詳細としては、まず、10月20日から22日までオスロに滞在して、オスロ大学の Elstad教授、 Knowledge Center の Solvi教授から国レベルでの教育評価政策の現状と課題について、また、Student Union 会長のBenjamin Myrstad氏 からは、教員評価政策過程及び学校における教員評価実践への生徒参加について詳細な聴き取りを行なった。さらにSandvika High Schoolを訪問し、学校現場における教育評価への生徒参加の実態についても聴き取りを行った。その結果、ノルウェーの教員評価の政策過程と実践過程の両方における民主主義的性格を具体的に解明することができた。次に、米国のPARモデルに関しては、3月にカリフォルニア州立大学フラートン校の Goldstein 教授を訪問し、今後の米国での実地調査について協議を行った。米国では、生徒のテスト成績に基づく教員評価のvalue added modelが優勢になっており、これまでPARモデルを積極的に採用してきた州・地域が方針転換するケースがある一方、結果重視のアカウンタビリティモデルに対するオールタナティブとしてPARモデルが新たな注目されるようにもなっている。その政策ダイナミズムの一端を解明できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ノルウェーの教員評価の政策・実践については、その民主主義的特徴(当事者の十全な参加が保障されていること)が解明できた。本研究は、複数の国おける教員評価の政策と実践について、その文脈固有性を考慮した検討を行うとともに、一般化可能性を志向するものであり、その点、民主性に特徴づけられるノルウェーモデルは、「有望モデル」の一つとして、日本への示唆に富むものである。また、オスロ大学のElstad教授を中心に進められている教員評価の政策・実践に関する研究に協力することになり、今後も継続的に政策過程をフォローすることができるだけでなく、将来のより本格的な共同研究の計画に着手できたことも重要な成果である。米国の教員評価については、結果重視のアカウンタビリティモデルが優勢になるなかで、同僚による支援・評価のPARモデルの意義と限界を考察する好条件が逆説的に整いつつある。本年度は、ノルウェーモデルの研究に予想以上に時間をとられ、米国での掘り下げた調査は来年度に延期せざるを得なくなったことが反省点だが、Goldstein 教授をはじめとする研究者ネットワークを生かして、平成25年度に調査を行ったミネソタ州でのフォローアップ調査やカリフォルニア州での調査などを平成27年度に行う準備を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画では、平成27年度は南アフリカまたはチリの教員評価の「有望モデル」について、現地調査を含む研究を実施する予定であるが、現在、諸情勢を勘案しつつ、研究交流のある研究者と協議を重ね、訪問調査の可能性を探っている。その一方、平成25年度と26年度に進めた米国とノルウェーの教員評価に関する研究が国際的な共同研究に発展しつつあることにも鑑み、両国での研究も継続する。
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Causes of Carryover |
当初、ノルウェー語から日本語への翻訳作業への謝金支払いを計画していたが、Web連動型の翻訳ソフトを試用したところ、十分に利用に耐えることがわかったため、翻訳作業の依頼を行わなかったことと、米国での学校・教員調査を実施しなかったため、その分でも人件費・謝金の支出がなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
米国、ノルウェー、南アフリカあるいはチリにて学校・教員調査を実施する際に協力してもらう大学院生への人件費・謝金として使用する。
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Research Products
(4 results)