2013 Fiscal Year Research-status Report
思考力・判断力・表現力を育成する対話活動における「聞く」意味に関する実証的研究
Project/Area Number |
25381023
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
木下 百合子 大阪教育大学, 教育学部, 名誉教授 (10169914)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 授業対話 / コミュニケーション / 協同 / 思考力 / 判断力 / 表現力 / グループ学習 |
Research Abstract |
本研究は、授業でのコミュニケーション過程において、生徒が教師や級友の話を「聞くこと」が、生徒の思考力・判断力・表現力の形成に与える影響を明らかにしようとしている。そのために、平成25年度は、次のことを実施した。 理論的研究として、ドイツにおける授業でのコミュニケーション関係の文献を購入し、先行研究に学んだ。また、9月にドイツライプチヒ大学を訪問し、「授業でのコミュニケーションと協同」に関する未出版の博士論文の一部を閲覧した。未出版の博士論文が多数存在することを確認した。 実証的研究として、主に大阪市、大阪府下の中学校の授業を参観してビデオに撮影し、プロトコールを作成した。 ビデオ撮影した授業の多くは、社会科でグループ学習を組織している授業である。話し合いの過程で生徒同士がどのように協力し、意見交換をして新しい考えを創り出しているかを分析することを課題としている。この課題には、生徒たちの話し合いがどのように関連しあって進行しているかを分析することも含まれている。本年度に作成した授業ビデオとプロトコールは、この分析のための材料となる。大阪市・大阪府下の中学校以外にも話し合い活動を重視した授業を実施している小学校・中学校を訪問した(神戸市、山形市など)。授業分析に関しては、授業研修にも参加したので、授業者の見解も聞くことができた。また現時点では、感想レベルではあるが、授業での話し合い活動について、生徒の意見も聞くことができた。 現時点での成果として、話し合いの過程の「聞くことと」と「話すこと」の関連、「聞くこと」と「考えること」の関連は、話し合いのテーマと関連しているという仮説をたてることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である、授業でのコミュニケーション過程において、生徒が教師や級友の話を「聞くこと」が、生徒の思考力・判断力・表現力の形成に与える影響を明らかにするために、平成25年度は、第1に、理論的研究を進展させること、第2に、話し合い活動が組織されている授業を参観してビデオ撮影し、分析の材料となるプロトコールを作成することを当初計画していた。 この当初の研究計画にしたがって、ドイツにおける授業でのコミュニケーションに関連した文献にあたり知見をえることができた。またライプチヒ大学を訪問して未出版の博士論文を閲覧した。未出版の博士論文がなお存在することを確認した。理論研究の成果として、授業での対話分析の方法を学ぶことができた。 第2に、大阪市・大阪府下の中学校の授業を参観し、ビデオ撮影し、プロトコールを作成した。このプロトコールを材料として、生徒が「話すこと」と「聞くこと」と「話すこと」の関連を分析し、同意の表現、反対の表現を確認できた。また、生徒の話し合い活動が、話し合いのテーマと関連しているという仮説を立てることができ、次年度の研究の方向性を示すことができた。 以上のように、当初の研究計画にしたがって研究を進め、次年度に継続発展していける成果を上げることができたが、当初の計画を大きく超えて進展することは可能ではなかったので、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、第1には、授業でのコミュニケーションと協同に関する理論研究を継続する。理論研究の中心課題は、「聞くこと」(情報受容)と「考えること」の関連に関する研究である。 第2に、実証研究として、平成25年度に引き続き、授業を観察しビデオを撮影し、プロトコールを作成する。そして、プロトコールの分析を進展させる。プロトコールの分析にあたっては、「話し合いのテーマ」と「聞くこと」と「話すこと」の関係に留意する。テーマへの関心が最初から高ければ、よく考え、よく話し、級友の意見をよく聞くと一般的に考えられている。しかし、最初はテーマへの関心が低くても、級友の発言に刺激されて、関心が高まる場合もある。また級友の話をよく聞こうとする場合もあるという推測が成り立つ。この推測にも留意して、プロトコールの分析を進める。また、必要に応じて、教師へのインタビュー、および生徒へのアンケート、インタビューを行う。なお教師へのインタビュー、生徒へのアンケート、インタビューについては、授業参観、ビデオ撮影、プロとコール作成と同様に、相手方(教師と生徒)の同意を得て協力をお願いするとともに、その結果に関しては、質的研究の方法に基づいて、その匿名性を保持することを条件とする。 第3に、研究の成果を国内の学会および海外の学会に発信する予定である。
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