2014 Fiscal Year Research-status Report
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25381027
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
渡邉 満 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (30127740)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 道徳性の発達段階 / 討論 / 合意 / コミュニケーション構造 / 論理的思考力 / 論理的思考力向上プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究課題の一つは、昨年度に引き続き、「合意を生み出す討論におけるコミュニケーション構造」の解明であるが、これについては、「ジレンマ資料による道徳授業」における生徒の思考過程を批判的に検討し、道徳性の発達段階(三水準六段階)と「より合理的な判断・解釈の導出・共有」とを「トゥールミンモデル」の論証過程を組み込むことによって結合することを企図して、コミュニケーション構造を、根拠を多層的に追求する討論の論理的展開過程の構造として明らかにした。 もう一つの課題、「道徳授業における学習展開過程の事例による比較分析」については、T社の副読本に掲載されている資料による授業展開とジレンマ資料による道徳授業「健二の迷い」の授業展開を比較検討し、前者の授業における討論の課題を明らかにすると共に、後者の討論過程にも不十分さが見られることを指摘し、それが生徒の論理的思考力の弱さにあることを指摘した。それに対応するために、討論の論理的思考を育成する実践的プログラム(「論理的思考力向上プログラム」)を共同開発し、高校2年生に対して試行的に実施した。それによって論理的思考力の形成の具体的方策が一定の効果を持つことが確認され、それによってジレンマ資料による道徳授業の討論過程の精密化に寄与する可能性を提案した。 上記の成果について「討論を中核とする探究的道徳学習の具現化と『論理的対話力』という課題の克服―具体的方策としての『論理力向上ワークショップ』の必要性・有効性―」のテーマで日本道徳教育方法学会第20回大会で研究協力者の岡本義裕と共同発表を行った。さらに内容を厳密化して、同学会誌『道徳教育方法研究(第20号)』に掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
討論の展開を規定するコミュニケーション構造を解明し、授業展開の討論過程として具体化する見通しを立てると共に、それを達成するために必要となる論理的思考力育成のためのプログラムを開発することができた。そして、さらに「討論を中核とする探究的道徳学習の具現化と『論理的対話力』という課題の克服―具体的方策としての『論理力向上ワークショップ』の必要性・有効性―」のテーマで日本道徳教育方法学会第20回大会で研究協力者の岡本義裕と共同発表を行った。さらに内容を厳密化して、同学会誌『道徳教育方法研究(第20号)』に掲載することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は2年次の研究成果を踏まえ、「道徳的価値に関する生徒間の合意を目指す学習展開のモデル」を開発するため、授業開発とその実践に取り組み、モデル化作業を進める。その際、3月27日に学習指導要領の一部改訂の告示があり、道徳の時間が「特別の教科 道徳」となることが確定したので、教科道徳(道徳科)が求める「問題解決的な学習」、「生徒が主体的に考える道徳」は、本研究が目指す道徳授業の方向に一致することから、扱う課題として現代社会の中に生じている諸問題や学級の中に生じる諸問題、例えば、生命倫理、きまりや法の遵守、各種ハラスメント、いじめ問題などを積極的に取り上げ資料(教材)化する。それらの道徳科における扱い方、展開のあり方については、別の研究(平成24-26年度科研基礎研究(B)「いのちの教育カリキュラムモデルの開発的研究」 代表者:梶田叡一)によってある程度明らかにしたので、その成果も基盤に置きながら、討論を活発に展開できる指導案の作成を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
各社発行の道徳副読本と教師用指導書を購入する予定であったが、平成26年度においては、多くの副読本発行会社は、道徳副読本については、道徳の教科化の内容が不明であったため、平成26年度版作成が控えられ、平成27年度使用版が作成されたと思われるので、平成27年度版副読本および教師用指導書の購入を行うため、平成26年度予算をある程度残しておくこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度交付分と併せて使用することで、各社の平成27年度版副読本及び教師用指導書購入を計画している。
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Research Products
(4 results)