2016 Fiscal Year Research-status Report
シュタイナー教育の今日的意義-能力概念に基づく国際調査
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25381028
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
衛藤 吉則 広島大学, 文学研究科, 准教授 (60270013)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | シュタイナー教育 / 生きる力 / コンピテンシー / ホリスティック教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、オーストラリアのマウント・バーカー・ウォルドルフスクールと公立のシュタイナー学校とモンテッソーリスクール、フィリピンのマニラ・ウォルドルフスクール、そして日本の公立学校でのアンケート調査のデータを分析し、今日的能力概念である「生きる力」や「キー・コンピテンシー」に注目し、シュタイナー学校とそれ以外の学校との比較・考察をおこなった。そこで見出されたシュタイナー的なホリスティックな物の見方については、博士論文『シュタイナー教育思想の認識論的基礎づけに関する研究』(広島大学 教育学博士)や広島大学・高麗大学共同国際学術大会発表論文「幸福と感情を考えるための一つの理論枠組みとしての『特殊即普遍のパラダイム』」(2016年11月25日、於:高麗大学)『倫理学研究』(第24号、2017年3月、9-14頁)、「シュタイナー教育思想の哲学的基盤(4)-「精神」と「自由」の獲得に向けたヘーゲルの認識論(後半)」『HABITUS』(第21巻、2017年3月、17-26頁)に公表した。さらにもう一つの対象国である中国におけるシュタイナー教育の研究については、バーバラ・ボールドウィン氏を通して成都華福徳教育の実際を解明するとともに、シュタイナー研究者の呉倍氏の著作『華徳福老師的心霊日記』等を中心に解明を進めた。さらに、中国での最終のアンケート調査に向け、オーストラリア・フィリピン・日本のデータ分析から明らかになったシュタイナー学校教育の特色に注目したアンケート用紙を作成しつつある。先進国と途上国、資本主義と共産主義、私立学校と公立学校といった比較がシュタイナー教育を軸に幅広い視野から浮き彫りにされつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に進んでいるが、中国でのアンケート調査は諸制約のため慎重にアンケート項目を検討する必要があり、アンケート調査実施に時間がかかっているのが現状である。しかし、中国でのシュタイナー教育の研究状況や海外の研究者を通じての交渉もあり、今年度半ばには調査ができる見込みが立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、まずは中国でのアンケート調査に向け準備を整え、調査後にすでに実施済みの日本・オーストラリア・フィリピンとのアンケート分析比較を行う予定である。公立学校を含むこれらの比較調査を通じて、シュタイナー学校独自の能力概念やその実践内容が明らかにされる予定である。また本年夏には、オーストラリアのシドニーにあるシュタイナーの治療教育施設に滞在し、その実践内容を考究する予定である。この研究を通して、シュタイナー教育が育成をめざすより広範な能力概念を描き出すことができるものと考える。今年度が本研究の最終年度にあたるので、総括した論文を日本語と英語で公刊できればと思っている。
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Causes of Carryover |
繰越額が生じた理由は、中国でのアンケート調査や実態調査が先方との話し合いで遅れたためである。具体的には、これまでオーストラリアやフィリピンや日本で行ってきたアンケート内容では分量的に多く、内容も煩雑なので理解が得られず、要点をしぼった簡易版の作成が必要となった。そのため、中国へのアンケート調査に行くことができておらず、その旅費や宿泊費等が未消化となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
簡易版のアンケートはほぼできあがりつつあり、今年度初めに準備を整えた上で中国の成都のシュタイナー学校に調査に行くことを計画している。昨年度繰り越した旅費を調査出張に充当する予定である。
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