2015 Fiscal Year Annual Research Report
近代教育政策定着過程における中央と周縁に関する研究-地域の人材育成と高等中学校-
Project/Area Number |
25381030
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小宮山 道夫 広島大学, 文書館, 准教授 (60314720)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 教育史 / 学力論 / 教育政策 / 進学 / 専門教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本助成による東北各県の資料調査に基づき、尋常中学校再編の状況と尋常中学校に対する地域での評価、尋常中学校の教育の実態、第二高等中学校との接続関係などが、断片的ながら明らかとなった。本研究以前に把握していた九州各県(第五区域)の事例とは構造の異なる地域の経済力と地域が望む教育内容、すなわち学習ニーズの在り方をとらえることができた。県ごとの差異はあるが寒村を多く抱える東北地方は都市部との経済格差が大きく、全体としては初等教育の普及に苦心する一方、都市部においては旧藩の人的・物的遺産を継承した先進的な中学校や各種学校も存在した。また仙台を東北地方の要衝地と認識しつつも東北地方の最高学府となりうる第二高等中学校には関心が薄く、むしろ東京に出る選択肢も有力であった。分析した一例で言えば弘前からの東京遊学の陸路での行程7日間のうち、仙台まで6日間を要し、残りの東京までは所要1日に過ぎないことを示し、仙台よりも東京にとの心理が交通網の整備により後押しされたことが推察できた。また、第二区域で必要とされた教育は帝国大学ほか上級学校へ進学してエリートとして将来的に国家や地域に貢献する人材ではなく、農学校や医学校など地域に直接貢献する人材の短期間での育成であった。 本研究では引き続き生徒の進学ルートの確定過程には国家の教育政策的意図と地域の教育需要との相互作用が大きく働いていたとの仮説のもと、高等中学校の実態を手がかりにその確定のメカニズムを明らかにしようと取り組んだ。資料の偏在により目論見どおりの分析はかなわなかったが、第二区域の中等教育再編についての掘り下げは出来たと理解している。 研究成果の総括として、『近代教育政策定着過程における中央と周縁に関する研究-地域の人材育成と高等中学校-(課題番号25381030)研究成果報告書』(2016年)を発行した。
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Research Products
(3 results)