2013 Fiscal Year Research-status Report
フィンランドにおける教員向上策の研究 -教員養成“修士レベル化”と教員研修
Project/Area Number |
25381047
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
古賀 徹 日本大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90297755)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 教員養成 / フィンランド / 教員組合 / 教員研修 / 修士レベル教員養成 |
Research Abstract |
平成25年度における研究の進展は,概ね研究計画どおりに進めることができた。本研究は,いま期待され求められる「教員の向上策」とはどのようなものかという問いをたて,そのためにフィンランドの教員養成制度,とくにフィンランドでの「修士レベル化」教員養成と現職教員研修の仕組みを“研究の対象”として設定している。平成25年度の研究計画としては,筆者が以前(平成21年)に現地で収集した資料や取材データを基礎として比較するためのデータを追跡調査・収集すること。それにより従来の「フィンランド理解」を超えるのも本研究に課された使命であるとしていた。次に,現地観察と取材により,問題点や研修の実態をプログラム形成やカリキュラムレベルでの理解として明らかにすることを提起し,この部分は2年間かけて行う研究の中心として設定していた。 前者(データ)については,8月にフィンランド(ヘルシンキ、トゥルク、タンペレ)における調査を実施した。フィンランド統計庁(Tilastokeskus)の教育部門への聞き取り取材を行い,また白書的な“Suomen tilastollinen vuosikirja”により戦後の各種統計資料を収集した。その成果として,2009(平成21)年調査でのデータ(文献“OPETTAJA VUONNA 2010”)と合わせ,同国での新制度導入後に表出した問題点を明示した研究論文を紀要に執筆している。 後者(研修の実態や教員組織等)については,フィンランドの教員組合(フィンランド教員労働組合:OAJ)を取材し,また全国教育施策会議について調査を行った。政治家,教育省,国家教育委員会のみならず,財界や教育現場の代表者,教員組合からも参加者のある国民的な会議である。なお組合組織については26年度に学会報告をする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料の収集については,前回(2009年度)調査の資料に加えて,最新版までの多くの資料を入手することができた。フィンランドは1910年代,70年代,90年代と大きな制度改革を行い,学校教育が拡張されてきた。大学については1959年から1979年までが最大の拡張期であったが,2000年以降は「質」の変化の時代を迎えている。とくに2010年の整理統合や新設大学の設置は教員養成改革にも大きく関わってくるが,この資料を収集することができたのは大きな成果である。 フィンランド統計庁の教育部門への聞き取り取材を行い,“Suomen tilastollinen vuosikirja”を入手することができた。これにより教育政策の成果を分析することが可能となる。フィンランドは資格社会であり国民ID制度があるため,全国民的データが政策の検証のために必須となる。 1週間の取材期間で十分に調査できなかった箇所については次年度に継続して引き継ぎたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降は,現地観察と取材により,問題点や研修の実態をプログラム形成やカリキュラムレベルで理解することを目的としている。前年度の基礎作業を受け,より具体的な分析・研究へと移行することになる。本年の調査対象・課題は次の三点となる。 ①ヘルシンキ大学周辺の資料収集を継続する。②現場での教員向上策を検討するために学校現場の観察を行う。③地域差を考究するため,ヘルシンキ以外の周辺都市に取材を広げる。「修士レベル化」により最も危惧されていたのが,教員配置や地域行政の違いにより顕現する「地域間の差」である。「システムとしての質保障」の問題について注目したい。 必要な研究費用としては,設備備品として文献・資料の購入とフィンランドへの調査研究旅費が主なものとなる。当初の申請時より円安となり,旅費滞在費などを圧縮する必要があるので,日数を限り効率よい調査を進めるための努力をする所存である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の研究計画において海外調査(フィンランド)旅費とともに国内旅費(フィンランド研究者の取材)を構想し、熊本、札幌の二カ所を予定していた。しかし円高から円安への急転換により海外調査の費用が膨らむことが予想され、国内調査については次年度以降に移す、もしくは学会報告時を利用してお話をうかがう機会を設定するなど整理することとした。 本研究ではフィンランド現地調査が必須であるが、経済の傾向もあり、2年目の調査を円滑に行うためにと考え、国内旅費として構想した分を次年度に繰り越したいと考えてのことである。 次年度においては、フィンランドの教員養成における「地域性」を中心に調査を行う。そのため東京-ヘルシンキ間の旅費のみではなく、フィンランド国内における移動として鉄道・バスを利用するための交通費が必要となる。鉄道は都市間交通、インターシティを活用する予定である(取材の都市への往復は各地一万五千円前後、三カ所を予定)。またフィンランド語のみの取材対象のために通訳料金が必要となる(平成25年度なみを予定)。
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