2014 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ新教育の市民性教育における「よい市民」育成の思想と実践に関する史的研究
Project/Area Number |
25381049
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐藤 隆之 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60288032)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 健市郎 関西学院大学, 教育学部, 教授 (50229887)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 市民性教育 / 進歩主義教育 / プロジェクト・メソッド / 遊び場運動 / ロイ・W・ハッチ / ジョセフ・リー |
Outline of Annual Research Achievements |
第一に、アメリカ進歩主義教育運動の中で提起された市民性教育論のパターンについて、第一次世界大戦期を対象として分析した。当時の市民性教育論は、愛国の精神に基づく従順を重視する保守的な市民性教育と、進歩主義教育の理念や実践に基づいてそれに再構築を迫り、アメリカ固有の民主的社会に適した革新的な市民性教育の二つに大別されることを明らかにした。その成果は、日本デューイ学会第58回大会で発表した。 第二に、進歩主義教育に基づいて展開された市民性教育の史的展開に関する文献を読み、当時の市民性教育の理論と実践の全容に迫った。市民性教育への関心は20世紀末転換期から高かったが、それが進歩主義教育と明確に結びついて発展するのは、第一次世界大戦後の1910年代後半以降であることが明らかになった。 第三に、市民性教育の具体的な取り組みとして、コロンビア大学のティーチャーズカレッジの附属学校ホーレスマン・スクールにおけるプログラムの開発と発展を取り上げて考察した。その際とくに、同校の市民性教育担当であったロイ・W・ハッチの主張や実践に注目して検討した。ハッチがいかなる経緯で同校の市民性教育担当となり、どのようなプログラムを立案して実践したかということを考察した。ハッチは、プロジェクト・メソッドに基づいた市民性教育を構想したことを明らかにした。 第四に、アメリカにおける遊び場運動の起源と展開という視点から、遊びやリクリエーションを手段とする市民性の形成について考察した。19世紀末頃から1920年代頃までに推進された遊び場運動においては、子どもの遊びを公教育制度に取り入れることが試みられた。それは当初児童救済を目的としていたが、後に愛国心や忠誠心を養う市民性教育を目的とするようになったことを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
市民性教育の事例として取り上げたコロンビア大学ティーチャーズ・カレッジ附属校ホーレスマン・スクールに関する文献はほぼすべて入手し、目を通すことができた。しかし、進歩主義教育運動において推進された市民性教育の取り組みの全容については、十分に検討することができなかった。また、ホーレスマン・スクール以外の具体的な実験についても、これから検討すべきところが残されているため、やや遅れていると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
19世紀末から1920~1930年代のアメリカにおける市民性教育論についてさらに理解を深めることにも取り組む。読むべき文献はほぼ特定できているので、その読解に力を入れる。また、ハッチの市民性教育の理論的特質や、それに基づく実践の実際について総合的に論じることにより、当時の進歩主義教育の市民性教育の実際について考察を深めることが今度の課題となる。遊び場運動から市民教化のための道徳・市民性教育への転換についてもさらに考察を深める。本研究課題の最終年度になるので、以上の成果を学会で発表し、論文にまとめた上で、それらを総括して報告書を作成する。
|
Causes of Carryover |
次年度の研究課題(アメリカにおける民主主義と国民形成に関する史的・哲学的考察)として講読した方がよいと判断した文献があったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
アメリカにおける民主主義と国民形成について史的・哲学的に研究した著作を購入する。
|