2013 Fiscal Year Research-status Report
高等学校の選択的カリキュラムにおける共通教養教育の調査研究
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25381050
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
水原 克敏 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (00124628)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 青年に共通に必要とされる最低限度の教養 / 国民に共通の教養 / 高等普通教育 / 個性化 / 多様化 / 世界標準のカリキュラム / 選択幅拡大 / 必履修科目 |
Research Abstract |
1.高等学校の創設過程において、日本の高校生の持つべき共通教養はどのように位置づけられたのか、当時カリキュラム編成のキーワードとして、「専門的技能・一般的な教養・健全な批判力・個性の確立」があげられているので、これを具体的な高等学校のカリキュラム事例から精査した。高等学校のカリキュラムを構想する上で、幼・小・中・高の連続性において国民共通の教養を検討する必要があるので、幼・小・中も含めて学習指導要領を検討し、幼稚園の教育課程について論文をまとめ、投稿した。 2.高等学校の実際の展開は、いずれの高等学校も「国民に共通の教養」という趣旨で38単位が設定された。その内容は、戦後改革期を反映して社会科中心(最多10単位)の単位構成であった。さらに、これが1951年学習指導要領になると、「青年に共通に必要とされる最低限度の教養」というタームとなった。要するに、共通教養としての必修教科・科目が確定された。しかし、高等学校の実態は、特段の理念もなく、一言でいえば、間に合わせのカリキュラムが進行した。経済的な裏付けが弱い時代の対応であった。 3.、1960年改訂のコース分け、1970年改訂の多様化、1978年改訂の弾力化、1989改訂の人間化と選択幅拡大、1998年改訂の個性化・個別化と一層の選択幅拡大、そして2009年では国際化志向など数次の改訂で、それぞれの教科の中で特定の教科を指定・選択させる仕方がとられている。しかしその編成原理に相当する説明は見当たらない。それらの教科はどういうコンセプトで共通教養の「必履修」とされたのか、その審議経過を追ってみても、それを見出すことはできなかった。換言すれば、その時代のニーズ、とりわけ経済的要請に対応する人材育成の観点から、教科・科目・時数の増減が繰り返されてきたと言える。そこに原理原則的なカリキュラム認識は確認できない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.高等学校の創設過程において、日本の高校生の持つべき共通教養はどのように位置づけられたのか、これを具体的な高等学校のカリキュラム事例から精査するという課題は達成できた。幼・小・中・高の全体を通して共通教養を検討し、その成果の一部を「子ども学」に投稿し掲載されることになった。 2.高等学校の実際の展開は、いずれの高等学校も「国民に共通の教養」という趣旨で38単位が設定された。しかし、高等学校の実態は、特段の理念もなく、一言でいえば、間に合わせのカリキュラムが進行した。経済的な裏付けが弱い時代の対応であった。この課題についても様々な地域や高校の実態に応じたカリキュラムを確認することができた。 3.1960年改訂のコース分け、1970年改訂の多様化、1978年改訂の弾力化、1989改訂の人間化と選択幅拡大、1998年改訂の個性化・個別化と一層の選択幅拡大、そして2009年では国際化志向など数次の改訂で、それぞれの教科の中で特定の教科を指定・選択させる仕方がとられている。しかしその編成原理に相当する説明は見当たらない。それらの教科はどういうコンセプトで共通教養の「必履修」とされたのか、その審議経過を追ってみても、それを見出すことはできなかった。この課題については、大体予想通りではあるが、政治・経済の側面だけでなく、より根源な深い追究が必要であり、今後とも熟考していく必要がある。 以上により、1と2は課題を遂行できたが、3の課題は短絡的に結論するだけでは従来の研究を超えることができないので、よりいっそう深めた追究が必要であると評価しなければいけない。よって、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.1960年改訂のコース分け、1970年改訂の多様化、1978年改訂の弾力化、1989改訂の人間化と選択幅拡大、1998年改訂の個性化・個別化と一層の選択幅拡大、そして2009年では国際化志向など数次の改訂で、それぞれの教科の中で特定の教科を指定・選択させる仕方がとられている。審議経過からはその編成原理に相当する説明は見当たらないが、高等学校の実際的なカリキュラム作りにおいて、どのような模索がなされたのであろうか、普通科だけでなく職業科の実際も詳細に分析することで、共通教養のあり方を解明する突破口を開きたいと考える。 2、日本の青年が持つべき共通教養のあり方を研究すると、やはり幼・小・中・高を通してカリキュラムの全体構想が問題になるので、改めて幼・小・中・高の教育課程の基準とそのモデルカリキュラムを分析し、国民全体のあるべきコアとなる教養について考究したい。国民のほとんどが進むカリキュラム全体を視野に入れて研究する必要がある。 3.「高等普通教育」が「基礎学力」に矮小化されたという先行研究の評価を再検証し、その意味するところを一面的ではなくより多重層の意義を抽出してみたい。公と私、経済と教育、個性化と多様化など、青年にとって矛盾に満ちた公教育であるが、そうした矛盾の中でいかに高等普通教育と専門教育のカリキュラムを編成すべきであるか、教育学的な思考を深めるために当時の時代を支配した理論を洗い直したい。 4.理論だけでなく高等学校の実態からも示唆を得るために、カリキュラム開発の研究指定校を訪問調査したい。計画書に記載したように広島大学附属福山高等学校・福山中学校では、「クリティカルシンキングを育成する中等教育課程の開発」がなされており、これは、換言すれば、中等教育におけるリベラルアーツのカリキュラム開発であるので、訪問調査することで研究を深めたい。
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