2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25381056
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Yamaguchi Gakugei College |
Principal Investigator |
松村 納央子 山口学芸大学, 教育学部, 准教授 (50341136)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | フレーベル / 人類 / 男性性 / 女性性 |
Research Abstract |
ヨーロッパの思想圏においては18世紀末に男女の「性」が術的に考察され始めた。この動向は、社会的存在としての理想像である人類(Menschheit)を考察する際に性差も考察の対象とされたことを意味している。こうした文脈を踏まえ、F.フレーベルは父や母となる以前の成人としての男性・女性をどのように位置づけたか、その上でどのように教育の領域へと展開したか、球体法則(das Sphaergesetz/ das Sphaerische Gesetz)における男女の特質に関する記述に着目した。 フレーベルの球体法則観においては、あらゆる事物に諸力が見いだされる。その諸力の展開はより広範囲へ及ぼうとする拡張と中心点への収縮とによって説明される。とりわけ人間においては、精神的・道徳的領域においても、また身体的・物理的領域においても拡張と集中とを行う存在である。この行いの内、男性に優位とされたのは拡張で、女性に優位とされたのは集中である。これに関連して、球体にかかわる思考実験の過程で、フレーベルは男性に悟性を、女性に感覚をその特性として付与した。しかし人類として人間が営為するには婚姻をともなう。1811年8月時点での球体法則観において「学問(Wissenschaft)」について、「知るということは学問ではない。-schaftという接尾辞は多様なものの統合を意味している」のであり、「精神を通じて知るということはまだ学問ではない。感覚を通じて知るということもまだ学問ではない。双方が結合して、学問である」 と記している。以上の思考実験を経て、命題「婚姻のみが、完全なる学問である」、「学問は婚姻と同様に完全であればあるほど、純粋で、完成され、なにより幸福なものである」、「それゆえ男性と同様、女性は学問へ、そしてその学問の貫徹へ向かうよう規定されている」が記された。フレーベルにおいてはこの男性性・女性性を認めた上で、教育上の営為が構成されたと言えよう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属機関の業務を優先した結果、国内で入手可能な資料の読解が中心となったため、ドイツにて保管されている手稿の閲覧と収集については当初の予定よりも遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
手稿の読解に努めるとともに、1800年代前半におけるフレーベルの著述や関係者の著述を精査する。一次資料については、自然諸学、とりわけ発生論的著述ならびにそれを説明する数論に着目する。 ボルノウに代表されるように、先行研究ではフレーベルの数学的図式は「象徴であって、それ自体には何の意味もない」とされてきた。しかし、1810年代の自然諸学に関わる思索においては、数を象徴として用いたねらいとして、自然諸学における発生論を踏まえてのことではないか。また、先行研究ではフレーベルはその教授論においては歴史的世界を排除してきたとの論が一般的である。しかし、自然諸学の文脈から再検討するならば、フレーベルは人間の歴史を文化史上ではなく発生史上の多様性としてアプローチしていたとして解釈できるのではないだろうか。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品の納入が翌年度となり、支出も4月以降となったため。 前年度発注した物品については納入後直ちに支払う。
|
Research Products
(2 results)