2015 Fiscal Year Research-status Report
保育者の臨床的判断の創出を核とした熟達化プロセスの検討
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25381077
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
藤本 松香 (古賀松香) 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (70412418)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 実践知 / 臨床の知 / 熟達化 / 保育者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、保育者のもつ実践知を臨床の知という視点から捉え直すことで、保育実践の不確実性の中で創出される臨床的判断とその熟達化プロセスを明らかにすることを目的としている。今年度は調査対象園において、新任、中堅、熟達の各段階の保育者の保育観察及び個別の対話的インタビューを継続的に行った。また、国立・公立・私立園において、各1回の観察・インタビュー調査を行うことにより、知の多様性を捉えられるようにした。 臨床の知については、中村雄二郎(1992)の臨床の知の構成原理に立脚しつつ、保育実践における実態に即した内容にすべく「保育における臨床の知」の構成原理試案を作成した。具体的には、コスモロジー:その子ども、その瞬間によって、独特に織りなされる空間や場の意味を捉えようとする知のありよう、シンボリズム:子どもと保育者の間で浮かび上がってくる意味を感知し、子どもにとっての意味にアプローチするだけでなく、多様な意味の交流や新たな意味との出会いを創出する知のありよう、パフォーマンス:相手や自己を取り巻く環境からの働きかけを身体に受けつつ相互作用する、人間の身体性を帯びた行為 の3つの知によって成り立つとした。その試案に基づいて、観察事例とインタビューの分析を行った結果、保育者は、まず実践時に感知されるある子ども周辺に生起した独特のコスモロジーを感知し、関与する必要性を感じとる。そして、具体的なパフォーマンスを起こすので、子どもの実態に応じた保育実践の起点はコスモロジーであると考えられた。また、実際のパフォーマンスとその結果として子どもと保育者の間に浮かび上がってくるシンボリズムは相互作用をする特徴があり、シンボリズムのズレを修正する働きの中で熟達化が生じてくる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画で予備調査に使用する予定であった観察スケールが、著作権の関係で使用できなかったことにより、観察園の選定等に遅れが生じた。特に、私立園における調査の遅れによりデータ数に不足が生じていたので、今年度は私立園における調査を継続調査と平行して集中して実施した。以上のことから、当初計画の全体の進行には遅れが生じているが、研究に必要なデータは確保できたので、今後は分析、論文投稿等に注力していく。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度の研究成果として得られた、「保育における臨床の知」の構成原理試案を基に分析作業をすすめ、論文投稿、学会発表をしていく。その際、専門性の熟達化については3つの知によって異なる可能性があり、また相互作用の生じるものもあるため、慎重に検討を行う。
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Causes of Carryover |
研究の進度に遅れが出たことにより、学会発表や論文投稿に遅れが生じていることで、予算使用に残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の研究成果の学会発表や論文投稿に使用する。
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Research Products
(3 results)