2013 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本における義務教育費国庫負担制度の展開過程と同制度の改革論に関する研究
Project/Area Number |
25381079
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
井深 雄二 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (30142285)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 義務教育費国庫負担 / 義務標準法 / 学級規模 / 教員定数 / 佐賀教組事件 |
Research Abstract |
初年度にあたる25年度には、主として二つの研究を行った。第一は、先行研究を収集し、その概観を得た上で、第二次大戦後における義務教育費国庫負担政策の総過程を俯瞰したことである。すなわち、戦後における義務教育費国庫負担政策の変遷と制度自体が一旦は廃止されながらも、直ちに復活せしめられた第1期、いわゆる「55年体制」の下で、義務標準法が制定され、これと義務教育費国庫負担制度がリンクせしめられることで案定的に機能した第2期、財政赤字の累増の下で臨時行政調査会設置を端緒として教育費削減圧力が強まり義務教育費国庫負担制度の縮小が始まる第3期、新自由主義教育改革・財政改革の進展の下で、義務教育費国庫負担制度の廃止(一般財源化)をも展望されながら制度改革が急進した第4期、がそれである。 第二は、第1期の分析に関わって、戦後における義務教育国庫負担制度の確立期の詳細な検討に着手したことである。1952年負担法における義務教育国庫負担制度は実員実額半額定率制で開始されたが、義務標準法(1958年)の成立に伴い、これとリンクせしめられることで定員実額制に変わり、以後長きにわたってこの制度形態が続いた。そこで、義務標準法の成立過程と負担法とのリンクの過程を分析することが、当該制度確立期を論定する上で鍵となる。ところで、義務標準法の制定は佐賀教組事件と深い関係があるとの見解がある。本研究では、この見解に注目し、佐賀教組事件の教育財政政策史的検討を行うことで、義務標準法成立の歴史的意義を考察しているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
戦後におけるわが国の義務教育費国庫負担政策の総過程を検討し、その叙述を目的とする本研究において、概ね総過程を俯瞰し得たこと、総過程把握の鍵とも言える確立期について、従来には試みられたことのない視角(義務標準法の成立と佐賀教組事件)からの検討を開始できたこと、及び義務教育費国庫負担予算の経年変化をデータベース化できたことなどから、研究は概ね順調に進展している、と言える。なお、戦後初期の教育財政改革問題検討の基礎資料となる田中二郎文書(コピー)、及び佐賀教組事件に関わる一次資料を入手できたことも補助的理由として挙げておきたい。ちなみに、これらの資料入手のため、当初の予算計画を越えて追加要求した。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度は、第一に、これまで収集した先行研究を網羅的にレヴューしつつ、戦後における義務教育費国庫負担制度の確立過程の分析を完遂し、学会誌等に投稿する。第二に、義務教育費関係の統計を整備する。第2年度は決算の経年変化を中心にデータベース化を進める。第三に、義務教育費国庫負担制度の縮減期に関する研究に着手する。
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Research Products
(5 results)