2014 Fiscal Year Research-status Report
児童虐待防止における保育所と関係機関の協働の分析と専門職連携教育プログラムの開発
Project/Area Number |
25381106
|
Research Institution | Nakamura Gakuen College |
Principal Investigator |
笠原 正洋 中村学園大学, 教育学部, 教授 (10231250)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 児童虐待防止 / 保育士 / 協働 / プログラム作成 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究目的は,児童虐待防止に関する保育所と関係機関との間の協働の実態把握と協働の評価を検討することであった。福岡県内の二つの保育協会の許可を得て,加盟全保育所404カ所の児童虐待防止担当者を対象に郵送法による質問紙調査を実施した。調査内容は,各保育所において,市町村や児童相談所の関係機関と協働して対応した事例を回想してもらい,協働が始まった経緯,関わった主な機関,協働の評価,また昨年度作成した児童虐待防止における専門職連携実践(IPW)で要求される保育所側の役割遂行能力尺度と関係機関側の役割遂行評価尺度である。206カ所(50.9%)から回答があり,229事例の回答が得られた。主な結果として,IPWで要求される保育所側の役割遂行能力については,組織内チーム対応・協働コミュニケーション・個別支援マネジメントの3因子が抽出され,組織内チーム対応と個別支援マネジメントの能力に特に問題があることが示された。関係機関側の役割遂行評価尺度については因子分析の結果,共有・ケース協議・発見や通告時の支援・事前情報提供の4因子が得られた。次に,協働が始まった経緯別に,上述の保育所側の役割遂行能力と関係機関側による役割遂行評価の変数が協働評価に影響するというモデルを設定しパス解析を実施したところ,関係者側のケース協議の高い評価が協働の肯定的評価を有意に高めることにつながり,保育所側の個別支援マネジメント能力の高さが単独で肯定的評価を高めるという結果が得られた。昨年度実施した児童虐待死亡または重大事例検証報告書の分析から,保育園側の個別支援マネジメントの問題が重大な帰結に至っていた結果を支持するとともに,本研究で作成している専門職連携教育プログラムにおいて個別支援マネジメントの技量をモデル化することに重点をおいた教材が重要であることを示唆する結果であると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
専門職連携実践およびその教育に関する文献リヴューが遅れている。これまで入手した先行研究は,協働概念,協働の質,協働を促す要因をモデル化しているが,本研究で想定している協働の能力という技量因子をそこに位置づけた,より精緻なモデル化が遅れているため。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査から,児童虐待防止における保育園側と関係者側との間の専門職連携実践の協働に関する教育プログラムのコンテンツを確定し,現職保育士らを対象にして,プログラム効果を検証する実践研究を実施する。
|
Causes of Carryover |
専門職連携実践およびその教育に関する文献リヴューの精査が遅れ,必要な文献収集が終了していないため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
すでに文献リストも作成しているため,速やかに研究作業を進めていく。
|