2014 Fiscal Year Research-status Report
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25381128
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高田 一宏 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (80273564)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前馬 優策 大阪大学, 人間科学研究科, 講師 (00632738)
林嵜 和彦 福岡教育大学, 教育学部, 准教授 (10410531)
諏訪 晃一 大阪大学, 人間科学研究科, 招へい研究員 (50440962)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 教育改革 / 学校選択制 / 新自由主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
共同研究の2年目にあたる2014年度は、大阪市内の小・中学校におけるフィールド調査と教職員に対するインタビュー調査を行った。さらに、大阪市教育委員会の定例会議や各種審議会を傍聴したり、学力向上に関わる研修会などに参加して、市の教育政策の動向を把握した。また、大阪市との比較対象として、大阪府和泉市や松原市における学校及び地域の調査を継続している。 大阪市内の学校におけるフィールド調査では、前年度に引き続き、市内初の施設一体型小中一貫校(A校)と住吉区内の小学校(B校)において、授業観察、教職員・保護者・地域住民へのインタビュー、資料収集を行った。さらに、同様の内容の調査を、2015年4月に開校する施設一体型小中学校C校の関係校(三つの小学校が統合され、一つの中学校とともに施設一体型小中一貫校として開校)でも新たに始めた。教職員に対するインタビュー調査では、大阪市内の主要な教職員組合二つの協力を得て、教員へのインタビューを行った。 これら一連の調査を通して、小学校の統廃合が地域活動や学校・地域連携に及ぼす影響、全国学力・学習状況調査の結果公開が教育活動に及ぼす影響、学校選択制や一貫校における全市からの児童・生徒募集の実情などの把握に努めた。 なお、これらの調査研究活動を進めるにあたっては、5月、9月、3月に研究分担者・研究協力者で会合を持って調査の進捗状況を確認するとともに、メーリングリストを開設して日常的に情報交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究の目的は大きく分けて2つあった。すなわち、(1)大阪の学校文化・教育文化の伝統の特徴を明らかにする、(2)その学校文化・教育文化に新自由主義的な教育改革が及ぼす影響を明らかにする、である。 (1)については、障害のある子どもとない子どもがともに学ぶ教育、地域住民・保護者と学校の教職員との信頼関係、学校教育活動と地域活動の密なつながりなど、大阪の学校文化・教育文化が明らかになってきた。(2)については、教職員の自発性や同僚性に悪影響を与えたり、管理職のなり手がいなくなったり教員採用試験の受験者が減るなどの影響がみられた。一方、保護者は地元校志向が強く従来の校区の外の学校を選択する例は少ないこと、障害のある児童・生徒や生活面・学習面で困難を抱えた児童・生徒を排除せず積極的に受け入れようとする姿勢が学校にあることなど、改革の影響は限定的だったり、大阪の学校文化・教育文化の伝統によって制度・施策の意味が再解釈・再定義されていることがうかがえた。 以上のように、調査はおおむね順調にすすみ、研究の目的はかなりの程度達せられているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度はこれまでの調査を継続するとともに、教職員インタビューの拡充、教職員人事関係の統計の収集、学校選択制の導入にともなって児童・生徒が減少してしまった学校でのフィールドワークなどを行いたい。 また、研究のまとめとして、夏から秋にかけて学会で共同発表を行う(日本教育学会、日本教育社会学会、日本教育行政学会などでの発表を検討中)。さらに、年度末に調査報告書を作成して研究のまとめとする。
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Causes of Carryover |
当初の計画ではインタビュー調査の文字おこしを外部業者あるいは学生のアルバイトに委託することを考えていた。だが、インタビューの中にはかなりセンシティブな内容を含んでいるものもあり、情報管理を徹底するため、研究分担者・協力者だけで記録を整理することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究の調査対象地・学校は、社会経済的に厳しい状況にあるところが多い。当初は想定していなかったが、貧困問題や社会福祉関係の資料・書籍を購入する必要が生じている。また、学会での共同発表を計画しており、その出張旅費を確保する必要もある。次年度使用額はこれらの経費の補填にあてる。
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Research Products
(4 results)