2014 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ合衆国の大学ガバナンスに関する理論的・実証的研究
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25381132
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福留 東土 東京大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (70401643)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 比較教育 / 高等教育 / ガバナンス / 素人支配 / 管理者の専門職化 / 共同統治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、米国の大学を対象に、理論と実証の両面から、大学ガバナンスのあり方を検討し、以って大学にふさわしいガバナンスについて考察する素材を提供することを目的としている。日本の大学改革ではガバナンスのあり方が重要な焦点となっており、学長のリーダーシップ強化を通じた機動的・集権的政策決定が高等教育政策における変革の大きな方向性となっている。しかし、そうした方向が改革の本来の目的である大学の質向上につながることは実証されていない。ガバナンスに関する研究と実践が積み重ねられてきた米国では、多様な構成員の参加を通じた対話と協働の重要性を説く研究が主流である。こうした課題を明らかにする上で、本研究は鍵概念を3つ設けている。理事会による素人支配、専門職化した管理運営者、教員参加による共同統治がそれであり、これら各概念の実相と相互の関係性を明らかにすることが本研究の主たる目的となる。平成26年度は、前年度に行った基礎作業を元に、理論・実証両面における考察の深化を図る段階と位置づけた。理論面では、前年度の歴史的観点に立った考察を基礎に、ガバナンスの基本的あり方を理論的に捉える枠組みについて検討を行った。その結果、学長を中心とする大学執行部によるトップダウン的運営は、大学に迫られる現代的課題を解決する方途の一つではあるものの、あくまで対処療法的な手段のひとつに過ぎず、ガバナンスを理論的に把握する上では、それ以外の基底的要素を位置づけることがより重要であることを見出した。その意味で、本研究における包括的視点からガバナンスを捉える視点の有効性が確認された。また、前年度に引き続き、事例研究による実態把握を行うため、本研究の事例研究対象の一つであるペンシルバニア州立大学を訪問し、関係者へのヒアリング調査と研究者との議論、および史資料の収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガバナンスに関する理論的考察を深めることができた。また、事例研究を行い、ガバナンスの実態に関する調査を行うと同時に、歴史的観点に立った研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降は、26年度までに進めてきた理論的検討と概念整理、および事例研究による成果をベースとしながら、個別大学に対する事例研究をさらに継続すると同時に、大学団体を対象とした調査を実施する。
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Causes of Carryover |
海外で行った実態調査が予定していたよりも短期となり、また物品費、人件費に予定していたほど費用が掛からなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外への訪問調査を複数回実施し、また関連図書および必要物品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(6 results)