2014 Fiscal Year Research-status Report
格差社会における高校生の進路保障の研究-オンタリオ州のリスク生徒支援と比較して-
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25381143
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Research Institution | Toyo Eiwa University |
Principal Investigator |
佐藤 智美 東洋英和女学院大学, 人間科学部, 教授 (80240076)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山村 滋 独立行政法人大学入試センター, その他部局等, 教授 (30212294)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スカボロウ・ビレッジ・パスウェイズ / 学習支援 / ボランティア / 京都市山科区 / 勧修中学校 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度はオンタリオ州、トロントにあるスカボロウ・ビレッジ・パスウェイズを2回訪問し、現地における貧困コミュニティの生徒支援について調査した。スカボロウ・ビレッジ・パスウエィズはパスウェイズ・トゥ・エデュケーションの第3世代にあたり、ユース・リンクを基盤として支援プログラムを展開している。一定の集合住宅に住む中等学校の生徒はすべて支援対象となり、プログラム開始当初の2009年には、登録生徒数は90名程度であったが、現在では300名ほどの生徒を支援している。 スカボロウ・ビレッジ・パスウエィズはプログラムを2か所において実施している。1つはコミュニティのリクリエーションセンターであり、もう1か所は教会である。リクリエーションセンターは近隣住民のための施設であり、アイスリンクも併設されていた。このセンターの最も大きな1室が学習支援等に使用されている。また、教会においても学習支援やメンタリングが行われており、生徒たちはこの教会の方を好む傾向にあった。どちらの場所においても、生徒とボランティアが和やかな雰囲気の中で学習していた。 日本においては、京都市山科区の勧修中学校でのボランティアによる中学3年生の学習支援を訪問した。課外で実施する地域住民をも巻き込んだ学習支援活動は現在のところ、日本ではそれほど多くない。学校施設を使用しての課外の学習支援には制限があるものの、地域や学生ボランティアと生徒との間には良好な関係が形成されており、毎週1回の学習支援の後には、スタッフやボランティアによる反省会が行われている。 また、山科青少年活動センターは、リスクを抱えがちな生徒たちの相談や話し相手、学習支援など、居場所としての機能を果たしていることが理解できた。日本におけるこのような支援活動の中にも、学習支援以外のメンタリングなどの支援が加わることによって、さらなる支援の効果が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は現在までの段階で、パスウエィズ・トゥ・エデュケーションのプログラム展開の実態について、第3世代のスカボロウ・ビレッジで実施されているパスウエィズを訪問することによって理解することができた。特に、2回目の訪問時には、1回目の訪問時にはまだ夏季休暇中として見学できなかった学習支援、メンタリングの現場を見学することができた。プログラムが実施されている現場を訪れ、生徒やボランティアの活動状況を具体的に理解することは常に研究の中心の1つであり、重視している情報収集の方法である。また、今回のスカボロウ・ビレッジ・パスウェイズ訪問では、かねてから実態について理解を深めたいと考えていたメンタリングが行われている現場を見学することができ、メンターと生徒とのやり取りについて知ることができた。さらに、生徒-親指導員の役割について、直接生徒-親指導員に話を聞くことができたのは有益であった。 日本における学習支援の1つの事例を京都市山科区の勧修中学校で見ることができたのは、日本社会において貧困の中にいる子どもに対する支援の困難さを理解するうえで有益であった。地域と学校が関わる中で子どもたちを支援することは多くの側面で慎重さが必要とされ、パスウェイズのプログラム展開とは異なった工夫や努力が考えられなければならない。このような地域の取り組みが今後さらに充実、拡大することが期待されるが、その際京都市山科区の勧修中学校での支援や山科青少年活動センターの関わりが支援の基盤として重要な役割を果たすことが推測された。 以上のような現場訪問から得られた情報や知見は今後の研究の方向や内容をより明確にするうえで重要な鍵となり、また研究の順調な進展を示していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、パスウェイズ・トゥ・エデュケーションが創設以来発展し続け、カナダ全土の16か所でそのプログラムを展開するようになった鍵について調査する予定である。2001年にオンタリオ州のリージェント・パークで開始されたパスウェイズのプログラムは、2015年には16か所で実施されるまでに成長しており、今後もこの増加傾向は続くと考えられる。パスウェイズ・プログラムの効果は明確で、厳しい環境のコミュニティに住むリスク生徒を中等後教育機関に送り出している。このプログラムがもたらしている教育的効果とそこに潜在的、顕在的にある支援上の鍵を明らかにする。 また、日本における研究としては、京都市山科区の山科青少年活動センターが中心となって実施している勧修中学校の学習サポートについて、その経過を追跡し、地域と学校との連携による学習支援について理解を深める。
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Causes of Carryover |
平成26年度には、2回のトロント訪問が必要となり実施した。しかしながら、2回目の訪問は先方との約束によって平成27年2月に実施となった。2月はトロントは真冬でオフシーズンであり、旅費が予定よりもかなり低額となったため、そのために生じた残額は次年度使用額とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度には、10月下旬から11月初旬において、パスウェイズ・トゥ・エデュケーション・カナダを訪問することをすでに予定している。また、オンタリオ州以外でのパスウェイズ・プログラムの実施状況についても調査することを計画している。 日本においては、京都市山科区の青少年活動センターが中心となって行っている地域との協働による学習サポートについて追跡調査を予定している。したがって、京都への国内出張の回数は前年度より増えることとなる。 次年度使用額は以上ような海外出張と国内出張の費用として使用する計画である。
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Research Products
(2 results)