2015 Fiscal Year Annual Research Report
イギリスの学校選択制導入(free school)をめぐる地域葛藤に関する研究
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25381146
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
加藤 潤 愛知大学, 文学部, 教授 (80194819)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イギリス教育 / フリースクール / 教員養成 / 市場原理 / school direct / academy / 比較教育 / initial teacher training |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の研究内容は、以下の2点に集約される。 1)イギリスにおける近年の教育改革で、地方現場学校がどのような対応を強いられているのかを明らかにすること。2)教育の市場化によって地方教育局と学校教育、教師養成教育が切り離された結果、学校はどのように質の高い教員を採用しようとしているのかを、大学との協力関係から明らかにすること。 以上を分析するために、8月―9月に大規模なインタビュー調査をイギリス、デボン州を中心に行い、同時にエクセター大学教育学部での聞き取りを行った。 この結果と前年までの調査を合わせると、次のような知見が得られたと考える。 1)地方自治体を排除し、政府直轄型の学校にするために作られたフリースクール(free school)またはアカデミー(academy)は、地域を分断し、一部の富裕層地域の教育資源をより潤沢にする方向に働いている。2)各学校は独自の現場型教員養成プログラムを作り、そこで養成した教師を採用している。したがって、従来の大学中心のアカデミックな知識を備えた人材は教員市場に出なくなっている。3)我が国へのインプリケーションとして引き出されるのは、市場化による学校選択が自由化された場合、かつてアメリカで言われたように、各学校が活性化するという側面以上に、地域と学校が分断され、モザイックな社会を形成してしまう可能性があるという警鐘である。 とりわけ、3)の示唆は、現在進められている我が国の学校改革(学区制廃止議論、学校評議会制度)に対して一つの先行的事例を提供したものと考えられる。我が国の学校教育の利点である、学校と地域、地方自治体とが強いつながりを持つことは、批判はあるものの、それを廃止して政府直轄型の教育行政にする改革の必要性はまだないと結論づけられる。
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Research Products
(2 results)