2013 Fiscal Year Research-status Report
米国高等教育の質保証における学習成果と単位にかかわる政策課題に関する研究
Project/Area Number |
25381156
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institution for Academic Degrees and University Evaluation |
Principal Investigator |
森 利枝 独立行政法人大学評価・学位授与機構, 研究開発部, 准教授 (00271578)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 単位制度 / 米国 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
25年度は海外共同研究者の招聘を行ってその協力を得ながら、米国の連邦政府の高等教育政策のインパクトを、地域アクレディテーション団体と高等教育機関双方において聞き取り調査し、また文献を分析することによって明らかにすることを試みた。 また、特に高等教育機関の側で、単位制度の実質化の証明や実質的所得を伴う就業率の報告などに関わるインスティチューショナル・リサーチの実務の現状を、個別機関の担当者等への聞き取りを行って整理し、単位制度の実質化の問題は遠隔教育機関を中心にしながらもすべての高等教育機関に影響が及んでいることと、実質的所得を伴う就業率の報告の問題は現在は特に非学位課程や営利大学に影響が及んでいることを明らかにした。このうち、後者に関しては非学位課程の連邦奨学金プログラムからの脱退の可能性や、非営利大学への政策の波及など高等教育のマネジメントにおいて今後予測される影響を明らかにすることに務めた。 さらに、米国の法令および政策動向に関する論考を中心とした文献調査から得た情報を加え、連邦奨学金制度を鍵としながら変化している高等教育の質保証に関する政府の関与の態様を、「単純な教育と学費の交換」から「政府からアクレディテーション団体への権力の一部委譲」までの段階別に概念化しモデル化を試みた。 これらの研究の成果のうち、特に単位制度の実質化に関する新たな法制度とその運用の実態にかかわる研究の成果を以て、研究代表者が論文「米国高等教育における教学マネジメントへの学外統制メカニズム-単位制度の運用を手がかりに-」としてまとめ、学会誌『高等教育研究』に投稿し査読を経て採択された。当該論文は本報告時点で印刷中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画段階では、本研究に基づく論文の発表を26年度以降に企図していたが、実際には単位制度の問題に関して予定より早く現状の整理と高等教育政策上の制度の意味の概念化を行い、25年度内に論文の完成と採択を見た(当該学術誌の発行は26年度)。これは米国の単位制度に関して研究代表者にある程度の知見の蓄積があるためであり、かつ米国の高等教育研究そのものにも先行研究の蓄積があるためためでもある。 本研究のもう一つの焦点である「実質的所得を伴う就業率」については、研究代表者にとって新たな課題でありかつ米国高等教育界にとっても新たな論点である。本研究において本年度、このテーマに関しては資料の渉猟とインスティチューショナル・リサーチ担当者への聞き取りを行い、その詳細な分析を今後の課題としている。これら2側面を勘案し、全体的な達成度はおおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は本研究の重要なテーマのひとつである「実質的所得を伴う就業率」に特に注目して、経済学者である海外研究協力者の支援を受けながら、連邦高等教育政策が、特に卒業生の実質的所得を伴う就業率の低い高等教育機関にどのようなインパクトを及ぼしうるかを検討の中心とし、25年度の成果とあわせて成果のアウトプットの準備を試みる。 すでに、米国教育省が収集し公開している個別高等教育機関のデータベースに基づき、「実質的所得を伴う就業率」が低いと評価される高等教育機関の特定を済ませており、今後、これらの機関が連邦奨学金の受給資格を失った際の影響について、教育学及び経済学の観点から分析することを計画している。27年度には海外研究協力者と共同で成果の発表を行うことを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、当初計画していた人件費の支出が発生しなかったことなどにより次年度使用額が生じた。人件費は外国語での論文の校正のために計上していたが、今年度執筆した本研究の成果がすべて日本語によるものであったためその要がなくなったことが要因である。 次年度使用額は原則として本年度使用しなかった英文校正費に充てることを予定し、有効に使用することとする。
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[Presentation] 単位制度再々訪
Author(s)
森利枝
Organizer
私立大学協会・大学教務部課長相当者研修会
Place of Presentation
オークラアクトシティホール浜松
Invited