2014 Fiscal Year Research-status Report
戦後教育改革期における数学教育の単元学習に対する再構成運動の影響に関する研究
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25381165
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
蒔苗 直道 筑波大学, 人間系, 准教授 (40345939)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 戦後教育改革 / 数学教育 / 単元学習 / GHQ/SCAP文書 |
Outline of Annual Research Achievements |
戦前から戦後に至る数学教育史の変遷上に,単元学習を位置づけ,その連続性を明らかにした。このため,以下の2つの下位課題に取り組んだ。 第一に,戦前の算術,数学の国定教科書『尋常小学算術書』『高等小学算術書』『カズノホン』『初等科算数』『数学』『中等数学』の各学年の内容の分析を行った。分析の視点として,まず,指導内容の構成から教育課程上の変遷をまとめた。次に,指導内容の取り上げ方が変化している内容として,立式の意味指導,割合の考え方,図形の性質と論証指導に焦点をあてて,その変遷をまとめた。そして,これらの内容の変化の意図を,編纂趣意書や編纂に関わる会議録,当事者の回顧録から検討し,単なる計算の技能の習熟を数学教育の目標とすることから,意味や理解を重視する指導への変遷として,戦前から戦後に至る数学教育をとらえた。 第二に,戦後教育改革期の数学教育における昭和22年の学習指導要領(試案)と昭和26年の学習指導要領(試案)や算数,数学の国定教科書『算数』『中等数学』,文部省著作教科書『小学生のさんすう』『中学生の数学』の分析を行った。分析の視点として,まず,指導内容の構成から教育課程上の変遷をまとめた。次に,立式の意味指導,割合の考え方,図形の性質とその役割に関する分析を行い,単元学習の特徴をまとめた。そして,GHQ/SCAP文書における会議録や当事者の回顧録から,その編集の背景を明らかにした。こうした戦後教育改革期の数学教育の単元学習においても,算数や数学の計算手続きや処理の意味,および,実際場面での数学のはたらきが重視されており,こうした数学教育は,戦前から戦後に至る数学教育の延長線上にあり,その連続性を評価できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
史料については,研究の遂行上に必要なものの収集が問題なく進められた。また,戦後教育改革期の数学教育を,混乱期の特殊な教育として,戦前・戦中の教育と断絶したものとしてとらえる数学教育史に対して,教育課程上の位置づけや,その背景にある数学教育観の変遷という面において,見直しの視点を提示する事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
史料収集については,平成27年度以降も継続して進める。特に,単元学習の導入に際しては,GHQ/SCAPや日本の教育学者の言説を通して受けた米国の進歩主義教育の影響を明らかにする必要がある。これを明らかにするために,戦後教育改革期にGHQ/SCAPが設置したAEL(アメリカ教育文庫)の後身にあたる教育課程文庫についての調査を行う。
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Causes of Carryover |
所属研究機関の個人研究費によって,消耗品にかかる経費および旅費を支出することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
史料調査等に使用する。
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Research Products
(1 results)