2014 Fiscal Year Research-status Report
スパイラルを重視した数学的活動による中高連携の代数カリキュラムの開発と効果
Project/Area Number |
25381174
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
両角 達男 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (50324322)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | スパイラル / 例で考える / 数学的探究 / 中高連携 / 代数カリキュラム / 教師の役割 / 単元「式と証明・高次方程式」 / 単元「整数の性質」 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「新たな意味形成と数学的な洞察との循環」を促すスパイラルを重視した数学的活動による、中高連携の代数カリキュラムを開発し、そのカリキュラムによる学習効果を考察することである。この目的の達成のため、平成26年度はスパイラルを重視した数学的活動による「例で考えることによる数学的探究」に関する理論的考察を進めた。具体的には、代数的活動、Computer Algebra Systemを利用した学校代数の教材開発とその事例分析、可謬主義的数学論、数学的共同体としての数学的探究に関わる理論的考察である。次に、スパイラルを重視した数学的活動による高校の単元「式と証明・高次方程式」を開発し、そのカリキュラムによる学習効果についての分析を行った。例えば、単元「式と証明・高次方程式」の内容の1つが、整式x^n-1の因数分解に関する数学的探究である。ここでは、「x^6-1の因数分解」という例を通して、さらにはこの例を超えてx^n-1の既約多項式のもつ性質を探究する様相が見出されている。 さらに、中学校の単元「関数のグラフと方程式」に関しては、単元の学習を通して育ませたい資質・能力を明確にしたカリキュラムを共同開発し、その学習効果についての分析を行った。また、同じ単元の学習においても、教師や学習集団が異なった場合にどのような違いが現れ、代数学習の深化にどのような影響が発生するかについても考察を進めた。具体的には、25年度の研究で開発した高校の単元「整数の性質」について、教師と学習集団を変えて26年度も授業実践を行うと共に、その学習効果についての質的分析を行った。特に、単元「整数の性質」の授業においては、熟練と若手の教師がそれぞれ授業を実践し、比較しながら分析することを通して「教師の役割」についての考察も進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スパイラルを重視した数学的活動による単元を設計し、授業実践する上で必要となる理論的な枠組みとしての「例で考えることによる数学的探究」に関する考察を進めた。 また、平成26年度の研究目的である、スパイラルを重視した数学的活動による単元「式と証明・高次方程式」、単元「関数のグラフと方程式」の開発、授業実践とその質的な分析、および効果の分析についても予定通り行っている。さらに、同じ単元においても、教師や学習集団が異なった場合に、どのような違いが現れ、代数学習の深化にどのような影響が発生するかについての考察も行っている。具体的には、異なる教師による単元「整数の性質の授業実践を比較することから、教師の役割などについての考察を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
スパイラルを重視した数学的活動による単元を開発し、実践するために必要な枠組みとしての「例で考えることによる数学的探究」に関する理論的な考察をさらに進める。そのため、例で考えることや学校代数に関する先行研究をさらに分析するとともに、科学哲学の知見を活かした数学的活動論、汎用的能力の育成を意図したカリキュラム論に関する考察も進める。また、School Based Curriculum Developmentなど関係するカリキュラム論に関する先行研究の分析も行う。 スパイラルを重視した数学的活動による単元の開発とその授業の質的分析に関しては、高校数学における極限や積分に関わる学習、数の拡張としての複素数の学習、式とグラフを読むことによる探究学習、中学数学における文字式を用いた説明・証明の学習に焦点をあてて、可能な範囲で考察を進める。 また、スパイラルを重視した数学的活動による、代数カリキュラム開発における「教師の役割」に関する質的な考察も進める。
|