2013 Fiscal Year Research-status Report
数学的表現のふり返りと修正を意識した問題解決的指導に関わる基礎的研究
Project/Area Number |
25381184
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
山田 篤史 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (20273823)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 数学的問題解決 / 表現 / ふり返り |
Research Abstract |
本研究は,問題解決的な授業の文脈で,問題解決で解決者がどのようにして独自の表現を構成・修正・洗練するかについて検討することを目的としている。そのため,(1)問題解決的な指導で学習者が数学的表現を構成するプロセスの実態の一部を明らかにし,(2)そうした表現のふり返りと修正が個人や集団の問題解決の進展に果たす役割を検討しつつ,(3)数学的表現の修正・洗練を助長するための指導の在り方について検討することを,具体的目的として設定した。 平成25年度は,まず目的(1)に関して,形式的・規約的表現や自然言語以外に,児童・生徒がどのような表現を構成するのかについて,国内外の文献をレビューした。この作業において,NCTM(2000)のPrinciples and Standards for School Mathematics及びそれに関する文献群では,低学年で児童独自の表現をさせることが推奨されているのに対して,国内文献群では,帯図・線分図や説明における話形など,教科書に見られる定型的表現を早期に与えて,その問題解決における利用の仕方を指導する傾向が見いだされた。ただし,我が国の教科書や授業記録の中には,そうした定型的な図的表現を,一般的には抽象化と呼ばれる思考・表現過程と結びつける傾向も見られた。そこで,表現の抽象化が問題解決に果たす役割についての先行研究を踏まえ,目的(3)の一部を先取りする形で,問題解決における表現の抽象化の2つの機能に着目し,次の2つの表現指導の在り方を指摘した。すなわち,捨象的機能の側面からは,「余情情報を容認して図の生成を積極的に行わせることから始め,次第に,余剰情報や捨象しても部分的解決に成功する情報は何かを考えさせること」,一般化機能の側面からは,「類推・統合的な考え方の誘発や類似問題の探索といった活動を盛り込むこと」という2点である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は,主に目的(1)の達成を目指して作業を進めた結果,国内外の文献や指導事例集を通じてのレビューは概ね滞りなく進展した。また,そうした国内外の文献比較を通じて,表現指導に関する興味深い対照的な指導的観点が見出されたため,目的(3)を一部先取りする形で議論を進めることもできた。一方,特設単元で扱われがちな問題に対する解決者独自の表現構成に関して興味深い事例が見出せた場合は,積極的にインタビュー調査などを進行させる予定であったが,この点については,概ね先行研究の事例の範囲に留まっており,当初計画通り,次年度に持ち越しとなった。このように,目的の達成度は,概ね,年度当初の計画通りであったため,上記のように評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降は,目的(2)及び(3)の達成を目指すことを目標にする。 まず,平成26年度は,特定の授業単元や問題群について,授業観察あるいは実験的調査などを行い,具体的な問題解決過程における表現の構成・修正に関するデータの蓄積に努める。収集したデータは,例えば,観察された表現の種類,ふり返りのプロセスによって修正された表現の種類,ふり返りによる表現の修正の仕方等々の観点を基に,質的分析を施す。そして,最終年度は,そうした個人の表現に関する分析に授業の時系列の観点を加えて分析し,理論的な検討も加えて,目的(3)の達成,すなわち,数学的表現の修正・洗練を助長するための指導の在り方について議論を進めて行くことを予定している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新規ビデオカメラ用の記録媒体(SDメモリ2枚1セット)を買い足す予定であったが,高速・大容量の記録媒体を購入するには,残額では購入できない可能性もあった。そこで,残額は次年度使用額として繰り越し,平成26年度予算と合算して購入することとしたため。 平成25年度に新規購入したデータ収集ビデオカメラ用の記録媒体などを購入するほか,授業観察,資料収集,関係研究者との意見交換のための出張旅費,更には,調査協力者への謝金などに支出する。
|
Research Products
(1 results)