2013 Fiscal Year Research-status Report
情報安全と情報人権の一貫した初等中等教育を支援する情報学協働学習環境の構築
Project/Area Number |
25381187
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
松原 伸一 滋賀大学, 教育学部, 教授 (30165857)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 情報科教育 / 情報学教育 / 情報教育 / 教育工学 / 教科教育 / 情報安全 / 情報人権 |
Research Abstract |
本研究は,情報安全と情報人権の一貫した初等中等教育を支援する情報学協働学習環境を構築することである。平成25年度の研究の成果については,特に人文社会系と自然科学系の情報学を観点にして学習内容の分析を行い,新しい情報学教育に対応した協働学習の授業モデルを構築したことである。研究実績の主な内容は,下記の通りである。 1.情報安全と情報人権に関する内容の抽出と分析 既に「情報学教育のコア・フレームワーク」を提案し,情報学教育全体のアウトラインについての構想が完了している。この成果を踏まえ,情報とメディアの本質,情報社会への参画等に関わり,新しい情報学教育における学習内容について,「情報」および「メディア」に関する項目を中心に抽出と分析を行うとともに,ディジタル情報の収集・分析も併せて行った。 2.教育クラウドを活用した新しい情報学教育の授業モデルの構築 教科「情報」には,新たに「社会と情報」および「情報の科学」の2科目が設置された。本研究では,新設された各科目の内容分析から始め,「人文社会系の情報学」と「自然科学の情報学」の両面から,学習内容の分析を行い,緊急性とニーズが高いとされる「情報に関する倫理的態度と安全」を中心テーマに内容を再構成した。それは,初等中等教育における情報教育の一貫した構成とし,すべての生徒に対し情報社会に主体的に対応するために社会の一員として必要な能力と態度を育てるものとした。この趣旨を前提に授業モデル構築として,情報とメディア,情報社会,情報のモラルと安全等について,抽出された学習内容に基づき,授業方略を策定した。その際,ネットワークを積極的に活用した協働学習を支援する学習環境を構築するという立場から,代表者の保有する設備等を使用し, e-LearningやWBL( Web Based Learning)としての学習環境も同時に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的に際して,情報安全と情報人権の一貫した初等中等教育を支援する情報学協働学習環境の構築については,関係する学習内容の抽出と分析は既に完了し,情報学教育の授業モデルを構築し,当初の研究計画を完了している。その授業モデルは,コアフレームワークをベースに,「2次元イメージ展開法」や「二値応答接近法」などの教育手法を活用し,可視化による情報共有を行うことにより学習者の思考を活性化し分析視点の表出を支援することで,効果的な学習が期待できる。 さらに,初等中等教育の海外文献調査として,米国における情報科学のK-12カリキュラムについて積極的な翻訳と分析を行い,本研究のベースとなるコアフレームワークとの比較検討を行い,本研究の新規性と重要性を再認識し,その成果を論文にて公表している。 なお,国内においては,情報安全に関するアンケート調査を,東京地区,滋賀地区,大阪地区の各地区において実施し,中学生,高校生,及び,大学生を対象に実施し,有効な情報を得ることができ,その成果を学会等で発表している。 また,ソーシャルメディアが情報の安全や人権に及ぼす影響が多いことから,情報とメディアの本質理解に向けて,初等中等教育の一貫した枠組みを新たに作成した。 以上のことから,当初予定していた以上に研究は進展し,成果もあがっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,インターネット環境を利用したWebベースの学習支援環境(試作版)の完成と協力者による評価を行い,その後,初等中等教育の一貫性に重点を置き,情報学協働学習環境の改良版(実用版)の完成と本研究の有効性についての分析・評価を行う。その主な項目は以下の通りである。 1.試作版の開発と協力者による評価:「社会と情報」および「情報の科学」を対象に「人文社会系の情報学」と「自然科学の情報学」の両面から,分析・抽出された要素(学習内容)をもとに,授業モデルをベースにして試作版を開発し評価を行い,試作改良版の開発と試験的な利用による評価を行う。 2.学習支援環境(実用版)への転換・充実:初等中等教育の一貫性について適宜評価を行い再度協議して,カリキュラムの妥当性について検証を行う。特に「情報安全」および「情報人権」に関わる学習内容は,「人文社会系の情報学」と「自然科学の情報学」の両面からのアプローチが重要で,学習項目と学習時間の縦横に広がる学習プロセス(学習内容の配置)と関係が深いため,情報学協働学習環境は「動的な支援」を必要とする。このような観点から,その授業モデルを改良・修正して,試作版の改良に向けて各種の条件整備を慎重に行う。次に,試作改良版を実際に利用して得られた評価結果をもとに,具体的な調整等を繰り返し行う。その後,実際に,実用版を利用して授業展開を行う。そして,利用者の評価情報を収集するとともに,学習内容と学習方法の妥当性にも配慮して,情報学協働学習環境としての評価とともに,授業方法の前提となる授業モデルのさらなる修正を行う。実用版を実際に利用して得られた各種の評価結果(システムから収集されるデータだけでなく,各種のアンケートを実施して得られた情報など)をもとにして総合的な見地で調整等を行い,実用改良版とする。 3.研究の評価と成果の発表:研究成果は,その都度,適宜行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初,情報の収集や分析等に際して,謝金を計上していたが,計画通りの情報収集と分析を行ったものの,支出の必要がなくなったことと,物品の購入に際して効率化を行うとともに,価格の割引等により,次年度使用額が生じた。 使用計画としては,データ入力やディジタルデザイン等の謝金,そのための物品費に当てる予定である。
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Research Products
(7 results)