2014 Fiscal Year Research-status Report
「言語活動の充実」の具体化のための教師教育のあり方についての研究
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25381188
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
渡辺 哲男 立教大学, 文学部, 准教授 (40440086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
牧戸 章 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (40190334) [Withdrawn]
山名 淳 京都大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (80240050)
柴山 英樹 日本大学, 理工学部, 准教授 (60439007)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミュージアム / 言語活動 / 言葉とモノ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、「言語活動」を誘発する環境的要因に関する研究を理論面、実践面にわたってさらに進めることとなった。とりわけ「ミュージアム」における、展示物という「モノ」が「言語活動」をいかように誘発するかという事例に着眼し、ここから教育現場での「言語活動の充実」に向けた示唆を得ようと考えたのである。公開研究会を2014年5月に、また公開講演会を2015年3月に開催し、「アート」と子どもを関わらせる入口として新しい「鑑賞」のスタイルを模索する学芸員の方や博物館教育学を専門とする研究者をお招きして、それぞれの実践を伺い、あるいは実際に彼らが行っているワークショップを体験し、私たちの研究を深化させるための手掛かりを得ることができた。また、2014年8月には日本教育学会でラウンドテーブル「「ミュージアム」としての学校/学校としての「ミュージアム」:博物館/美術館の教育哲学? 」を企画し、研究者、学校教員、学芸員の方に参加いただき、多様な視点から本研究に関わる議論を行うことができた。 「ミュージアム」は、「アート」と関わる場として、本来的には「学校」と対極的な関係に位置付くはずである。「正解」や「意味」が存在する、あるいはそれを求める場としての機能を不可避的に有する「学校」に対し、「ミュージアム」は、その「意味」を一旦外すことのできる場であり、対極的な関係を子どもが行き来して、「言語活動」をはじめとした表現活動をしていくことは、非常に重要であると思われる。しかしながら、現実には、子どもが「アート」に接近するためのさまざまな試みは、「対話が充実する」ことそのものに重きを置かざるを得ない面があり、「言語活動」を促すための鑑賞者(学習者)に対する指導にのみ傾斜しただけでは、「鑑賞中の対話が楽しければそれでよい」といった見方も成立してしまう。この点が、今年度の研究で見出せた非常に重要な点であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点では、理論的側面からの「言語活動」の意味内実に関する研究、とりわけ、言語活動が、モノや空間などといった「環境的要因」にどう誘発されるかという極めてオリジナリティの高い点に着眼した点で、非常に先端的な研究を進めることができていると自己評価している。今年度は学芸員を招いての実践報告を伺う機会も設けることができ、単なる理論研究に収まらない成果もあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
3年計画のうち2年を終えることとなるが、いまだ手をつけられていないのが、本研究課題のタイトルにつけられている最後の文言「教師教育」である。これまでの理論、実践研究を、現場の教師教育としてどのように展開することができるか、次年度の研究課題はまさにこの点である。また、学校教育での「言語活動」を相対化するための参照枠として、私たちは「ミュージアム」を用いてきたが、学校現場そのものでの「言語活動」をどう捉え直すかも、最終年度である次年度の重要な課題となる。
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Causes of Carryover |
本研究課題には、もともと現メンバー3名に加え、もう1名いたのだが、昨年度末に体調不良によりメンバーから抜けることとなってしまった。4名で研究費を使用する計画を見直したが、結果として当初の予定よりも少ないメンバーで研究を遂行する必要が生じたため、未使用額が発生してしまった。また、「ミュージアム」の研究にゲストを招いて公開研究会等を行ったが、一部、招聘したいと考えていた方が日程調整できず、謝金として予定した額を残してしまい、未使用額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度招くことのできなかったゲストを、今年度は公開研究会等の場にお招きすることで、翌年度分と合わせた助成金を執行するようにしたい。また、今年度は、学校現場やミュージアムなどの調査や見学に出向く機会が増えることが予想されるので、昨年度の未使用額はこうした用途にも用いることにしたい。
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