2013 Fiscal Year Research-status Report
理科と数学における共通性を見いだす能力を高めさせる指導法の開発
Project/Area Number |
25381193
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
石井 俊行 奈良教育大学, 教育学部, 准教授 (50636446)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 抽象化能力 / 気づき / 関連づけ / 学習の転移 / 共通性 |
Research Abstract |
理科と数学における酷似した内容を2つ対比させ,両教科の共通性を見出す能力(抽象化能力)の育成が可能な学習内容を検討することが「基盤研究C」の申請内容であった。その第一段階として,本研究では,理科の「物体からの光が鏡で反射して目に届くまでの経路を求める」問題と数学の「最短距離を作図をして求める」問題の解決方法の共通性に着目し,「学習の転移」を促す条件について考察することを目的に行った。 その結果,「学習の転移」を促す条件として,「気づき(notice)」と「関連づけ(interdisciplinary attitude)」の両者が必要なことが明らかになった。意識調査でも,同じ解法で解決できる場合には,「授業でふれて欲しい」と回答した生徒が多数いたことからも気づかせる手だての必要性が実証された。 理科と数学の教師は,生徒に「気づき」を起こさせる指導として,教材の共通点と相違点を共有し,誤概念を生じさせぬよう意識して授業を行い,生徒の抽象化能力を高めていく必要がある。また,同教科の解法につまずいても,他教科で学んだ知識を活用して解いてみようとする「関連づけ」を促す指導が必要である。両教科の問題を対比させて学習させることは,両教科の共通性を見出す能力を高め,生徒に問題解決のための「学習の転移」を起こさせる手だての1つとして期待される。このような学習指導上の工夫が,生徒の学習内容の理解を深め,さらに学習を転移させる力を高めさせることにより,発見や発明を促す能力や創造性を広げる柔軟な思考力を育てるであろう。 問題解決に際し,教師は,生徒に教科独自の解法に固執させず,教科間に共通な原理・構造があることに気づかせ,それらを関連づける指導を行う必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究期間内に、「『濃度』,『圧力』,『浮力』のそれぞれの理科の単元についての調査問題と意識調査を実施する。また,それに対応する数学的な能力を測る調査問題を実施し,生徒の科学概念を阻害する要因を究明する。」を明らかにすることを目的に行うと記した。 理科と数学における教科間の学習の転移を促す条件を解明することを目的に行った研究が研究紀要に掲載された。(「教科間の学習の転移を促す条件に関する考察とその提言-理科『光の反射』と数学『最短距離』の作図を通して-」,『科学教育究,』( Vol.37・NO.4・pp.283-294,2013)) また、「圧力」に関しては、理科と数学との関連についての調査を2014年3月に完了し、現在分析中である。分析が終了次第、学会等に論文を投稿する予定である。なお、「濃度」については、非常に数学との区分けが難しく、どのような調査問題がよいのかを検討している。 以上のように、当初の計画では、研究が行き詰まっている部分もあるので、次項目「今後の研究の推進方策等」で研究の展開を改め、当初の研究の進展が図られるようにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書には,「理科と数学における酷似した内容を2つ対比させることによる共通性を見出す能力の育成の視点は,まだ突き止めたばかりで,先行研究はなく、先駆けて抽象化能力を高めさせる学習内容を見出すことができることができるものと考える。」と記した。研究を進めていくうちに、実は、理科と数学との両教科での共通性を見出す能力のみに焦点化するのではなく、理科として同一教科の中にも酷似した内容があることに気がついた。このことは、理科教員が数学教員と連携をして抽象化能力を育む指導よりも、同一教科内で育む指導の方が対応が簡単で効率もよいと言える。したがって、「濃度」に関しては、「飽和」という共通性に着目し、中学2年生で履修する「湿度」を学習する際に、中学1年生で履修済みの「濃度」とを対比して、そこで共通性に気がつかせ、学習を円滑に進めていく方法もよいのではないかと考え、これについて調査を終え分析を行っている。 また、申請時には、「浮力」について検討をすると記したが、「浮力」を解決するには、その前段階として「密度」を理解していなければならない。「密度」を定着させるにはどのようにすればよいのかと考え、「浮力」を「密度」に転換し、研究を進めていくことにした。そして、「圧力」と「浮力」の概念の習得には、共通して「単位」を意識させた指導が重要である。この「単位」という共通性に関する調査を行うことは意義深いと考え、調査を終了しその分析を現在行っている。
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