2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25381194
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
棚橋 尚子 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (20272271)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 漢字,語彙の配当 / 興味,関心の形成 / 漢字使用の必要感 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は,韓国において漢字授業をする中で,外部から照射する形で国語教育における漢字語彙の問題を見出すことに努めた。ただし,漢字復活を唱えている割に韓国における漢字使用事情は芳しくなく,それは学校教育上でも同様であり,語彙の問題よりも漢字習得における興味,関心の問題の方に傾注することになった。同時に中学,高校における漢字(漢文)の授業を見学する機会を設定したが,教師自身の読み書き能力が期待していたほど高いものではなく,生徒たちの漢字に対する学習意欲も二極化していた。つまり,興味のある生徒は漢字に関してかなり高い学力を有しているが,低い生徒は学力どころかまったく漢字に関心を示さず,例えばグループ活動などでは,学力の高い生徒ばかりが活動するなどの事態が見受けられた。 上記の韓国の事例は,日本においても漢字使用への興味,関心と必要感の形成が,漢字学力および語彙の獲得に関与することが重要だと示唆している。 また,韓国の場合は私の想定する研究課題とは全く違う次元の漢字教育が行われていた。つまり,漢字は漢文の中で学ぶために,漢詩や故事成語などの中に提示される新出漢字の指導をしていくのである。韓国において漢文は選択科目であり,教科書も何種類か刊行されているが,教科書によってはかなり難しい漢字から学ぶなどの事態が起きていることが分かった。このことも,興味や学力の二極化に影響があると考えられ,自身の研究課題である教科,語彙を意識しながら学年別漢字配当表を見直すことに大きな意義があることが確認できたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一昨年度より,文化庁文化審議会国語分科会委員となり,漢字小委員会およびその下部会議である主査打合せ会の委員を担当していた。この問題は私自身の科研ともかかわる部分もあるが,仕事についてはかなり負担が大きく,自身の科研研究に専念するのが難しかった。 さらに大きな問題として,昨年度は母親の介護が大変になり,本来研究を進めることが可能となる土曜日,日曜日は実家に戻り介護に専念する必要があった。そのため,思うように研究を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は学年別配当の漢字・語彙表の完成を目指していくつもりである。ただし,介護について負担の増加が予想されるため,難しい状況だと認識している。
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Causes of Carryover |
本来の目的である研究についての資料が集められておらず購入の必要がある。さらに本年度は,国内外への周知活動を目出しておりその費用が必要である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度版小学校教科書および28年度版中学校教科書(全教科)の購入および選択した教科の教科書についてのデータベースの作成(業者依頼) ・漢字・語彙表の作成と広報活動の実施
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