2014 Fiscal Year Research-status Report
21世紀型学力の日米比較による感性・美的判断力を培う美的教育カリキュラム開発
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25381200
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中村 和世 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (20363004)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 学力 / アメリカ合衆国 / 感性 / 美的判断力 / カリキュラム |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)21世紀型学力に対応した学習評価の開発:平成25年度に進めた日米の図画工作・美術科における21世紀型学力の比較から、これからの学習評価には形成的アセスメントの導入が不可欠であることを指摘し、これまでに研究代表者が広島大学附属三原小・中学校、および、広島県尾道市立瀬戸田小学校との共同研究によって進めてきたポートフォリオを用いた学習評価のあり方を見直し、授業実践における形成的アセスメントの具体的なあり方について検討を行った。 (2)小学校における協働型アクション・リサーチの実施:(1)での形成的アセスメントの検討に基づき、広島県尾道市立瀬戸田小学校において、授業研究を踏まえた協働型アクション・リサーチを実施した。協働型アクション・リサーチには、13名の教員が協力し、「学習の転移」につながる思考力・判断力・表現力を高めるためには、どのような形成的アセスメントの方法が効果的であるのかを仮説に基づく授業を通して検討し、教員に対する質問紙調査とグループインタビューの内容分析、子どものポートフォリオの内容分析などを通して具体的に示した。 (3)米国の図画工作・美術科の最新事例に関する情報収集と検討:先進的な米国の図画工作・美術科の事例として、イリノイ州にあるシカゴ大学実験学校とフランシス・パーカー・スクールを2015年1月に訪問し、カリキュラム編成と学習指導・評価について調査を行った。調査からは、米国では、芸術の専門家の思考方法を子どもに経験させることで子どもの創造性を伸ばすという考え方に立ったカリキュラムと学習指導の開発が進んでいることが明らかになった。また、学校との連携教育を行っている先進的な美術館の事例として、シカゴ美術館を訪問し、どのようなプログラム開発が行われているかを調査した。調査では、構成主義の学習理論に基づく探究型の学習指導の開発が進んでいることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主要な目的は、21世紀型学力の日米比較を通して、子どもの創造性の礎となる感性・美的判断力を高めるための新しい学習理論と学習指導を明確化し、学校での実践研究を通してそれらの効果を検証することにある。構成主義の新しい学習理論から、わが国の図画工作・美術科においては、形成的アセスメントの実践研究を進めることが必要であり、広島県尾道市立瀬戸田小学校の協力を得て、アクション・リサーチを実施し授業における具体的なあり方を明確化している。また、海外における最新事例の検討から、芸術にかかわる専門分野の「核心的で重要な概念やプロセス」を軸にして子どもの経験の再構成を図るカリキュラム開発が行われていることが分かり、次年度において進める広島大学附属三原小・中学校での実践研究の準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に進めた日米の図画工作・美術科における21世紀型学力の比較、および、平成26年度に行った米国における図画工作・美術科の最新事例に関する情報収集から、米国では、形成的アセスメントによって子どもの自律的な学習態度・能力を育むことに加えて、芸術にかかわる専門分野の「核心的で重要な概念やプロセス」を軸にして児童・生徒の経験を再構成する学習の開発が進んでいることが明らかになった。これを踏まえて、今後は、広島県尾道市立瀬戸田小学校において、引き続き、形成的アセスメントに関する協働型アクション・リサーチを進めるほか、広島大学附属三原小・中学校において、図画工作・美術科教員の協力を得ながら「核心的で重要な概念やプロセス」を学習に取り入れたカリキュラムの開発を行う。
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Causes of Carryover |
海外の学会での口頭発表のための出張旅費に関して、わずかではあるが残額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に引き続いて実施する研究に必要とされる消耗費として使用する予定である。
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