2015 Fiscal Year Annual Research Report
戦後初期における入門期国語教科書の改革に関する実証的研究
Project/Area Number |
25381201
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
吉田 裕久 安田女子大学, 教育学部, 教授 (80108373)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 戦後国語教育史 / 戦後国語教科書史 / 入門期国語教科書 / まことさんはなこさん / いなかのいちにち / いさむさんのうち / プリマ、プレプリマ / ヘファナン文庫 |
Outline of Annual Research Achievements |
入門期国語教科書3冊のうち、第1分冊の『まことさんはなこさん』は、教科書本文はもちろんその指導書までも、CIE係官ヤイディの手書きによる厳しい検閲(修正指示)の跡がGHQ/SCAP文書に残されている。しかし第2分冊『いなかのいちにち』には、教科書本文・指導書双方の英訳はあるが、ヤイディの細かな指示は見られない。さらに第3分冊『いさむさんのうち』になると、教科書本文の英訳はあるが検閲の跡は全くなく、指導書に至っては英訳さえ見当たらない。指導書自体が、編集されなかったものと思われる。 この教科書検閲柔軟化の要因としては、①GHQの日本占領が次第に終結に向かってきたこと、②石森延男他の文部省担当者が入門期国語教科書の編集に習熟してきたこと、③アメリカの当時の入門期国語教科書がCIE係官ヘファナンによって輸入され、それらを具体的に参考にしながら編集が行われるようになったことなどが考えられる。このアメリカの入門期国語教科書は、現在、筑波大学附属図書館のヘファナン文庫に保存されている。 戦後初期のこの時期にアメリカ国語教科書の影響を受けたことは、この入門期国語教科書3冊の編集だけに止まらず、次のような点で、昭和20年代後期の検定教科書期における入門期国語教科書のあり方(内容・方法)に大きな影響を与えた。①1年生教科書が、第1分冊-プレプリマ、第2分冊-プリマ、第3分冊-第一読本という3分冊スタイルとして確立した、②二人の少年少女(多くは兄妹)の生活物語(家庭、学校、地域)という形で内容が定着した、③語句・語彙を少数に限定し、それを繰り返し提出するという表現方法がモデル化した。 歴史に「もし」は禁物だが、この時期のアメリカの国語教科書・国語教育の影響がもう少し長期に及んでいたならば、その後のわが国の国語教科書・国語教育のあり方に対して、さらに大きな影響を与えたのではないかと考えられる。
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