2015 Fiscal Year Annual Research Report
音楽文化のグローバル化と音楽教育を通した国民アイデンティティーの形成
Project/Area Number |
25381203
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
石井 由理 山口大学, 教育学部, 教授 (70304467)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国民アイデンティティー / 音楽文化 / 音楽教育 / 台湾 / シンガポール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グローバル化時代の音楽文化と音楽教育を通した国民アイデンティティー形成を、台湾とシンガポールを事例として探究した。教育政策の分析と大学生を対象としたアンケート調査から政府の意図と人々の国民アイデンティティーを検証し、文化のグローバル化における国家の役割を明らかにしようとした。研究初年度に台湾とシンガポールの教員養成大学で実施したアンケートは、「台湾/シンガポールの音楽」「我が国の音楽」「郷土の音楽」「好きな音楽・よく聞く音楽」の各項目に対して曲目を回答するもので、その分析を通してどのような特徴をもった曲が共通のアイデンティティーとなっているのかを明らかにした。 研究2年度目は台湾の教育政策と社会背景を調査し、80年代までの中華民国国民育成を目指した政策にもかかわらず、国定教科書掲載曲はほとんど回答者がアイデンティティーを感じる曲とはなっておらず、日本統治下に近代西洋音楽文化を取り入れた台湾作曲家の曲と、台湾語で歌われている現代台湾ポップス歌手の曲が共通して上位に上げられた。これら以外には「台湾」は中国語の現代台湾ポップス、「我が国」は国歌と中国語の台湾楽曲、「郷土」は台湾語の少し古い時代の歌謡曲が回答される傾向があった。 27年度はシンガポールに関して同様の分析を行った。多様な民族を抱えつつも、それらの共通音楽として政府が導入したNational Education songsがいずれの項目に対しても多く答えられたほか、回答者の民族にかかわらず、中国系、マレー系、インド系の曲を平等に取り混ぜて答える傾向が見られ、国民アイデンティティー政策は成功しているようにみえる。 しかし、いずれにおいても回答者が日常的に聴いているのは西洋的地元ポップスであり、中国語文化圏として両者の国境を越えた行き来も見られ、経済のグローバル化が音楽文化の広がりに与える影響を示すものとなった。
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Research Products
(6 results)