2013 Fiscal Year Research-status Report
操作的証明を取り入れた代数的証明の学習環境の研究開発
Project/Area Number |
25381210
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
佐々 祐之 熊本大学, 教育学部, 准教授 (30315387)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 操作的証明 / 代数的証明 / 教授実験 |
Research Abstract |
本年度は,まず,操作的証明(Operative proof)に関するE. Ch. Wittmannの先行研究を精査するとともに,操作的証明の概念についての理論的枠組みを考察した.先行研究を再度精査することを通して,操作的証明が本質的学習環境デザインにおける中心的な学習活動として位置付けられていることが明らかとなった. 次に,中学生を対象とした操作的証明に関する教授実験を行い,中学生の操作的証明に関する理解の様相を分析した.教授実験では,授業者側が意図する位取り表とおはじきの操作を自然な流れで引き出すための学習課題を検討し,段階的な操作的証明への学習軌道を設計して調査を行った.その結果,操作的証明を取り入れた説明の活動を段階的に取り入れることによって,次第に授業者側が意図するおはじきの操作ができるようになること,また,操作的証明を構想する段階で,他者との相互作用によってアイデアを共有することが有効に機能するということが明らかとなった. さらに,中学校数学科における代数的証明に関する学習活動の現状を把握するため,代数的証明が未習の段階の中学校第1学年の生徒を対象に,文字を用いた数学的証明に関する実験授業を行い,現状分析を行った.その結果,文字を用いた代数的証明では,文字式の四則計算などに関して十分な定着が図られていなければ,形式的な記述として証明を構成することができたとしても,その意味や証明そのものの構成には至らないということが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,操作的証明に関する先行研究の収集と分析に関して,ドルトムント大学のE. Ch. Wittmann氏を訪問する予定であったが,日程等の折り合いがつかず,本年度中の実現はできなかったため,すでにこれまでに入手していたWittmann氏の先行研究を再度精査することを通して理論的枠組みの確認を行った.必要に応じて,次年度以降も情報収集と先行研究の分析を継続して行いたい. 中学校数学科における代数的証明に関する学習活動の現状把握については,中学校第1学年の生徒を対象とした実験授業を通して,分析を行うことができた.本学の附属中学校と熊本県内の公立中学校の2校で実験授業を実施し,比較分析を行うことができ,概ね満足した成果を上げることができた. 研究成果の中間的な発表に関しても,操作的証明に関する教授実験の分析結果を,全国数学教育学会第38回研究発表会において発表することができ,同学会の学会誌「数学教育学研究(第20巻第1号)」に論文として掲載することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度については,研究計画の通り,操作的証明を用いた本質的学習環境のデザインとその検証と予定している.研究計画では,中学校第2学年の「文字を用いた説明」の単元における操作的証明を想定しているが,昨年度の操作的証明に関する教授実験や,代数的証明に関する実験授業の分析から,ある程度早い段階から継続的におはじきと位取り表による操作的証明の経験を積ませていくことの必要性が示唆されていることから,必要に応じて,小学校高学年の段階における操作的証明を用いた本質的学習環境のデザインも併せて行いたいと考えている. 研究に当たっては,本質的学習環境のデザインと並行して,操作的証明に関する先行研究の分析も継続して行い,理論的枠組みを教師ながら研究を進めるものとする. また,本質的学習環境のデザインとその実証的研究については,平成27年1月の全国数学教育学会において中間的な成果として発表することを予定している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,ドイツのドルトムント大学を訪問して情報収集を行う予定としていたが,先方との日程の調整がつかず,訪問は実現しなかったため,一部研究費を繰り越すこととなった. 平成26年度においては,引き続きドルトムント大学のE. Ch. Wittmann氏の訪問に向けて日程調整を行うが,加えて,操作的証明について継続的に研究を個なっているエクセター大学の藤田太郎氏の訪問も含めて日程調整を行い,情報収集および意見交換のための旅費として繰越額を使用したい.
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Research Products
(5 results)