2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25381217
|
Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
水戸 博道 明治学院大学, 心理学部, 教授 (60219681)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 音高の符号化 / 絶対音感 / 相対音感 / 移調楽器 / 音楽教育 / ブラスバンド |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、絶対音感保有者と非保有者が移調楽器を演奏する時に、どのように音高を符号化しているのかについて調査した。 調査対象者は、幼少期からピアノの学習歴があり、現在、クラリネット、トランペット、ホルンなどの移調楽器も併せて学習している音楽専攻生である。調査方法はインタビュー形式とし、(1)絶対音高の音名に音高を符号化することが、移調楽器の演奏にどのような不都合をもたらすか(2)不都合が起きた時にどのような対処方法を行っているのかという2点に着目し、半構造化インタビューを行った。絶対音感の保有の程度と、移調楽器の演奏時の音高の符号化との関連を調べるために、全ての参加者に60問からなる筆記形式の絶対音感テストを行った。 調査の結果、絶対音感を保有している者は、移調楽器を演奏する時でも、演奏音を移調楽器のキーに合わせて符号化することができず、演奏に大きな障害があることがわかった。対処方法としては、楽譜を書き直す、運指法そのものを変更する、音名を頭の中で変換する等、さまざまな方法を用いていることが分かった。一方、絶対音感を保有していない者は、移調楽器の演奏に大きな不都合は見られないことが分かった。しかし、絶対音感を保有していない者も、同じ種類の楽器でキーの異なる楽器に持ち替えたりする時は、音高のフィードバックに困難を示すことがあることがわかった。 今後、調査を、吹奏楽部の高校生やプロの移調楽器奏者など、さまざまなレベルの移調楽器奏者に広げていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、移調楽器を演奏する者の音高の符号化の実態調査を完結する予定であったが、インタビュー項目の決定に時間を要し、音楽専攻大学生のデータしかとることができなかった。本調査を開始する前に、予備インタビューをおこなったところ、移調楽器の読譜方法は、楽器に寄ってさまざまに異なり、その違いを熟知しないとインタビューを円滑に行うことができないことがわかった。そのため、インタビューを行う前に、異なる移調楽器奏者に、読譜方法の実態の予備調査を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、移調楽器の符号化の実態を音楽専攻の大学生のみにしか行うことができなかった。そのため、特定のレベルの奏者の実態しか調査することができなかった。今後は、音楽専攻生よりもレヴェルが劣っていると考えられる吹奏楽部の高校生や、逆にレヴェルの高いプロの移調楽器奏者を対象に調査を続けていく予定である。 28年度夏までに調査と分析を完了し、グラスゴーで行われる国際音楽教育会議で発表する予定である。
|
Causes of Carryover |
本年度までに、移調楽器の音高の符号化に関するインタビュー調査を完了し、国際会議等で発表をする予定であった。しかし、インタビュー項目の作成にてまどり、調査を予定通り開始できず、本年度中に調査を完了し、データを分析することができなかった。そのため、予定していた調査のための旅費と国際会議での旅費を使用しなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度に調査を行うことができなかった移調楽器を演奏する吹奏楽部の高校生と、プロの移調楽器奏者へのインタビューの旅費に使用する。大阪の高等学校の吹奏楽部で5回調査を行い、また、静岡在住のプロの移調楽器奏者へのインタビューを1回予定しており、このための旅費と謝金が必要である。また、2016年7月24日からイギリス、グラスゴーで行われる国際音楽教育会議で口頭発表を行うことが決定しており、このための旅費も必要となる。
|