2013 Fiscal Year Research-status Report
音楽的発達と音楽的文化化の観点から検討した小学校のリズム指導カリキュラムの開発
Project/Area Number |
25381219
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gifu Women's University |
Principal Investigator |
水野 伸子 岐阜女子大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30440556)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福本 徹 国立教育政策研究所, その他部局等, 研究員 (70413903)
安藤 久夫 岐阜女子大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90387457)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 児童 / リズム感 / 拍感 / 音楽的同期 / 手拍子 / 音楽聴取反応分析装置 |
Research Abstract |
本研究は、小学校音楽科で養う能力の一つであるリズム感について、児童の発達過程を実験から明らかにした上で、リズム指導カリキュラム開発を行うものである。平成25年度では、研究分担者らが開発した音楽聴取反応分析装置を用いて、手拍子による音楽への同期実験を小学校で実施し、基礎データを得た。 実験は、小学校1~6年生まで各2クラスそれぞれ集団で実施し、「きらきら星変奏曲(モーツァルト作曲)」鑑賞時、音楽に同調して発生する手拍子情報を、手袋に付けた電極からコンピュータへ直接入力して採取した。この装置の概要は、ハードウエアとしては児童の拍動作を画一的な電気信号に変換するためのスイッチ装置および電子回路であり、ソフトウエア的には0.1秒ごとにデータを採取してパソコンに取り込むプログラムである。 現在、データの整理(ビデオ映像と照合しながらコントローラー間タイムラグの調整、チャタリングのカット)を終え、拍同期時の手拍子に注目し、リズム感の土台となる拍感について分析を進めている。 幼児対象の実験結果(水野2012)からは、西洋音楽の根底を流れる拍感より旋律の輪郭を優先する伝統的音感覚が強く確認された。しかし、現代の音楽文化や学校音楽教育が西洋音楽の様式を基本とすることから、児童のリズム感は伝統的音感覚に西洋的感覚が融合されながら発達していくと予想される。この過程を明らかにすることは、音楽指導上大変重要であり、分析装置を用いて科学的に実証する点に本研究の意義がある。 また、岐阜県内の現役教師30名から児童のリズム感とその指導について質問紙調査をした結果、児童のリズム感の二極化傾向と系統性に欠ける指導の現状が示唆された(岐阜女子大学紀要第43号,2014)。後者は、西洋的リズムについて教科書を分析した結果からも裏付けられた(初等教育学研究報告VOL.3,2014)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、まず、リズム感の最も基礎となる拍感の発達的解明が主眼となる。それを調べるために、手拍子による同期実験を音楽聴取反応分析装置を用いて実施した。研究分担者らは、2011年実用新案登録した授業分析装置を改良し、児童・生徒の手拍子情報をリアルタイムで収集できる装置を2013年に開発した。この、「手袋に付けた電極からコンピュータへの直接入力」「0.1秒間隔での自動記録」を付加した新装置は、幼児対象に実施した実験結果(水野2012)より精緻な反応データの取得を可能とした。その結果、児童一人ひとりに至る手拍子情報の詳細な時系列変化やクラス全体の瞬時値が把握でき、より正確性の高い拍感の解明につながることから、結果的には当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、音楽聴取反応分析装置により記録したデータの分析を進め、各変奏曲や学年による比較、さらに幼児や成人の結果とも比較検討し、音楽的発達と音楽的文化化の観点から児童のリズム感の発達過程を明らかにする。それを基に、小学校における段階的なリズム指導カリキュラムを作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究は、音楽聴取反応分析装置により記録したデータの分析及び、それを基にしたリズム感の発達的解明であり、それは、本研究の中核となる。したがって、研究分担者や研究協力者らとの検討会議を頻繁に開催する予定であることから、その旅費や印刷機等の費用が必要になる。 また、その研究成果を、音楽教育や教育工学に関する学会で広く発表する予定であり、その旅費にも使用する。 研究費は、次年度前半に、研究分担者や研究協力者らとの検討会議の旅費や印刷機購入等に使用し、後半には学会等で研究成果を発表するための出張旅費・論文投稿費用に使用する。また、リズム指導カリキュラム開発のための文献や資料収集、研究会等にかかる旅費や経費にも使用する計画である。
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