2014 Fiscal Year Research-status Report
「音楽する耳」を育むプログラム-文化施設と学校と〈音楽家の耳〉トレーニングの連携
Project/Area Number |
25381225
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Research Institution | Elisabeth University of Music |
Principal Investigator |
岡田 陽子 エリザベト音楽大学, 音楽学部, 講師 (70573103)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 晴子 エリザベト音楽大学, 音楽学部, 講師 (00573081)
壬生 千恵子 エリザベト音楽大学, 音楽学部, 准教授 (60572964) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 音楽鑑賞 / 意識して聴く / 拍子感を養う / 総合的な音楽教育 / 〈音楽家の耳〉トレーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、文化施設と教育現場と〈音楽家の耳〉トレーニング研究所が連携して、幼稚園、小学校、中学校、高等学校における音楽鑑賞プログラムを開発することである。 平成26年度は、尾道市教育委員会の協力のもと、まず尾道市立向東小学校において、5年生を対象に音楽の鑑賞授業を2回(9月、2月)実施した。音楽を漠然と鑑賞するのみでなく、意識して聴くために「聴く視点」を提供した。また「聴く視点」をより深く認識するために、〈音楽家の耳〉トレーニングシステムを用いた表現活動も行った。授業実践と児童へのアンケート調査の結果、「聴く視点」をもとに音楽を聴いている児童が多いことがわかった。また、表現活動を伴うことにより、より明確に「聴く視点」を認識することが可能となることもわかった。更に、音楽の聴き方に変化が見られたり、音楽への興味が深まった例も見られた。他、向東幼稚園では、園児を対象に音楽を聴く時間を持ち、石川県立金沢辰巳丘高等学校においては、〈音楽家の耳〉トレーニングを用いた講座を実施するなど、音楽鑑賞プログラムの開発を小学校以外の場でも展開している。 平成26年度は文化施設で行われるクラシックのコンサートが少なくなったが、授業の際にはコンサートの紹介も併せて行った。しかし、小学校が島にあるという立地条件のため、文化施設へ行く事の難しさがあることが再確認できたが、学内で音楽やコンサートに対する興味が深まっている事例も確認できた。 また、文化施設で行われたホールでのコンサートにおいて、来場者を対象にアンケート調査を実施した。クラシックのコンサートが減っている中、他の文化施設や地域についての現状を知るために、福山市立大学教育研究交流センター公開講座「ホールは生きもの」~地域の活性化とホールの使命~に参加、他、軽井沢国際音楽祭、エジンバラ国際芸術祭にも参加した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ホール等の文化施設と学校現場と〈音楽家の耳〉トレーニングが連携して、総合的な音楽鑑賞プログラムを開発することであるが、それぞれ連携体制を取りながらおおむね順調に進行している。ただ、文化施設で行われるクラシックのコンサートが減少しているため、新たな問題点が浮き彫りとなった。 音楽鑑賞プログラムの開発は、幼稚園、小学校、中学校、高等学校を対象としており、平成26年度は、平成25年度からの継続である小学校の5年生に加え、幼稚園児、高校生にも着手することができた。 小学校での授業実施にあたり、教科書の鑑賞教材の楽曲分析を行い、教授法の運用と教材化のための研究を行った。具体的には、音楽を聴く際に、「聴く視点」を提供した。「聴く視点」を明確に認識するための方法として、〈音楽家の耳〉トレーニングシステムを用いた表現活動を併せて行った。拍子感を養うトレーニングを軸に、音楽を「感じる」、「模倣する」、「覚える」、「リズムをたたく」、「歌う」等の体験を行うことにより、「聴く視点」が明確となり、音楽を最後まで集中して聴く事が可能となる例や、音楽への興味が深まった例が見られた。この研究報告については、エリザベト音楽大学紀要に研究ノートとして発表した。 教科書以外の楽曲においては、文化施設で演奏される曲を授業の際に紹介し、文化施設との連携を進めた。しかし、文化施設でクラシックのコンサートが減少している状況をふまえ、本研究の目的である音楽への興味・関心を育み音楽を楽しむ人が増加する環境作りを目指していくためには、今後は、コンサートの企画と実施等も視野に入れて研究を進めていく必要性があることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
音楽鑑賞プログラムの開発は、幼稚園、小学校、中学校、高等学校を対象としており、平成25年度は小学校6年生を対象に、平成26年度は小学校5年生を対象とした研究を中心に進めてきたが、今後は、これまでの経験に基づき対象の幅を広げていく。 鑑賞プログラムを開発する際は、〈音楽家の耳〉トレーニングシステムを用いて、「聴く」だけでなく、音楽を「感じる」、「模倣する」「覚える」、「歌う」等の活動を通し、総合的に音楽を捉えることを重視してきたが、今後も継続していく。これまで「拍子を感じる」トレーニングを軸に上記の活動を行ってきたが、「和音」の響きを感じるなどの活動へも結びつけて行きたいと考える。そのために相応しい楽曲を教科書やそれ以外等から幅広く検討し、引き続き総合的な音楽鑑賞プログラムの構築を目指す。 また、現場の教員の協力も得て、一緒に実践していくことが可能となる機会を作りたいと考える。 当初、鑑賞プログラムの開発と並行して、文化施設等ホールとの連携を深めながら多くの児童がホールへ足を運ぶような体制作りを計画していたが、ホールでのコンサートが減少している現実を前に、コンサートの企画・実施を検討したいと考える。当初から計画していた研究会も併せて実施し、3年間の研究成果等の報告も併せて行う。
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Causes of Carryover |
海外での調査・研究に研究分担者も同行する計画で旅費を計上していたが、研究代表者単独での調査・研究でも十分な成果が得られると判断したため。 また、ホールとの連携を構築する予定であった研究分担者が、研究に従事できなくなったため研究分担者を辞退し、海外研修を行わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
文化施設において、クラシックのコンサートがほとんど実施されない状況となったため、クラシックコンサートの企画・実施について検討したい。
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Research Products
(1 results)