2014 Fiscal Year Research-status Report
外国人教育方針・指針と在日コリアンを対象とした小学校の授業実践
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25381237
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
磯田 三津子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10460685)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 外国人教育方針・指針 / 在日コリアン / 多文化教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、主に京都市の外国人教育方針・指針の内容を分析し、その内容に基づいて行われた実践事例を考察した。平成26年度の研究成果は具体的に次の2点である。 (1)「京都市立学校外国人教育方針」(1992年)に基づいたカリキュラムの成果と限界についてアイデンティティ形成という観点から研究を行った。本研究では、「京都市立学校外国人教育方針」の内容と「京都市小学校外国人教育研究会」に所属する教師たちの実践報告に基づいて、アイデンティティ形成という観点からみた外国人教育の成果と課題を明らかし、これからのカリキュラムの在り方について考察した。外国人教育の成果として、在日コリアンの子どもが韓国・朝鮮人としての自覚を得ることと、民族アイデンティティを形成をめざし、民話、遊び、歌など様々な文化に関する教材及び、「韓国併合」「創氏改名」などをテーマにした外国人教育の歴史教材が開発されたことが明らかとなった。 (2)「外国人教育の基本方針(試案)」(1981年)と1980年代初頭に行われた京都市立陶化小学校の校内研究について研究を行った。本研究の目的は、外国人教育としての授業実践の中で民族差別をなくすために在日コリアンと日本人のそれぞれの子どもたちにどのような能力を育成しようとしたのか公立小学校で開発された指導計画の分析を通して明らかにすることであった。その結果、次の2点が明らかとなった。第一に、低・中学年を対象に朝鮮民話などの教材を通して、日本と韓国・朝鮮の共通点と相違点を知り、韓国・朝鮮に対する肯定的なイメージを形成する内容を設定していたことである。第二は、在日コリアンが本名を名乗ることができる教育内容を高学年社会科の近代史を中心に設定していたことである。以上の成果に加え、外国人教育の課題についても論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度と平成26年度の研究を通じて、京都市、大阪市といった在日外国人教育を継続して行ってきた地域の外国人教育方針・指針を収集し、それぞれの内容を分析することができた。また、外国人教育方針・指針に従って、これまで実践を行ってきた数名の教師たちに対する聞き取り調査や、外国人教育に関する研究集会に参加することを通して、1980年代から現在にかけてどのような実践が行われてきたのかについて情報を得ることができた。 平成26年度は、各自治体の教育員会に連絡を取り、収集可能なすべての外国人教育方針・指針を収集することができた。これらの資料の分析・検討は、平成27年度の研究課題である。 以上の通り、本研究に必要な資料は、おおむね収集することができた。これからの課題は、それらの資料を外国人教育及び多文化教育の理論に従って分析・検討することである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は次の2つのテーマに従って進めていきたい。 (1)多文化教育の理論に基づいた外国人教育方針・指針の分析と考察を行うことである。研究の手続きは、第一に、1970年代から現在までの外国人教育に関する先行研究を収集し、外国人教育における重要課題とは何かを明らかにすることである。第ニに、第一で明らかにした課題が全国自治体の教育委員会が策定した外国人教育方針・指針の中にどのように具体化されているのかを量的に分析することである。第三に、外国人教育方針・指針の分析結果を米国の多文化教育の理論に基づいて考察し、現在の外国人教育の課題を明らかにする。 (2)外国にルーツのある子どものアイデンティティを形成することの意義と課題についてである。研究の手続きは、第一に、外国人教育方針・指針において外国にルーツのある子どものアイデンティティ形成が重要な課題として位置づけられてきたことを明らかにする。第二に、アイデンティティを形成することにはどのような意義と課題があるのかについてチャールズ・テイラー等の理論をもとに検討する。第三に、アイデンティティの形成を目指して実践された外国人教育の実践を分析する。
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