2014 Fiscal Year Research-status Report
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25381265
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
菅 裕 宮崎大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (30272090)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 演奏指導 / 音楽表現 / 足場かけ |
Outline of Annual Research Achievements |
10年以上の吹奏楽指導経験を持つ3名の指導者に,3台のキーボードによる合奏の表現指導をさせ,指導の過程をVTRに記録するとともに,演奏者の演奏変化についてもMIDI信号により記録した。指導終了後,指導者を別室に移動させ,指導の意図やねらいについてインタビューするとともに,演奏者3名に対しても指導を受けていたときの思考内容や具体的な演奏変化の内容についてインタビューを行った。その結果,優れた指導実績を持つ3名の指導者は,いずれも直接的な指示ではなくメタファーを含む間接的な指示によって演奏者の主体的な演奏表現変化を引き出そうとしていることが明らかとなった。しかしながらこうした意図を持つ指示についての演奏者の受け止め方は場面によって異なっており,そのことがその後の演奏表現姿勢に大きく影響している。演奏者は,指導者の指示の意図について十分に理解できない状態であっても,質問や確認を行うことはない。指導者の発言には何らかの意味があるはずだと考え,指導者の意図を探りながら表現を変化させようと努力する。したがって,指導者側が演奏者側の主体性を引き出そうとしている場面でも,演奏者の中では,指導者の主導権が常に強く意識されている。逆に,指導者の意図が明確に理解できていると感じられるときには,演奏者はより積極的に表現変化のための思考を展開しており,その表現が回を追うごとに強調されていくこともあった。演奏者の積極的な表現の喚起に成功している際の指導の手立ては,「初期の段階では学習者の能力を越える課題の要素を年長者が制御し,学習者の力量範囲で対処可能な課題要素の達成への集中」に導く「足場かけ」の過程を含むものであるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の課題であった,熟練指導者の演奏表現指導の特徴を明らかにすること,指導方法の違いが学習者の演奏表現や演奏態度に与える効果を明らかにすることについては,成果を上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
実験データのより詳細な分析を行うとともに,演奏指導者へのインタビューなどから得られた知見をもとに,演奏指導力向上のためのカリキュラムの開発に取り組む。
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Causes of Carryover |
消耗品の購入時に,使い切れない微小な差額が生じたため発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の消耗品購入に合わせて使用する。
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