2015 Fiscal Year Research-status Report
特別活動によるいじめ未然防止プログラムの開発研究-学級活動で育む人間関係の構築-
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25381281
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
松岡 敬興 山口大学, 教育学部, 准教授 (10510539)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蜂谷 昌之 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (60510542)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 特別活動 / いじめ / 共感性 / ガイダンス / 学級活動 / 自尊感情 / 人間関係づくり / 自己理解・他者理解 |
Outline of Annual Research Achievements |
いじめを未然に防止するために、自己理解・他者理解を深め、望ましい人間関係の構築を図るプログラムを開発し、A県B市の公立中学校において授業実践を行い、生徒の制作物や自由記述、授業評価アンケートなどの資料(データ)を得た。 研究分担者と協働しながら、「いじめ未然防止プログラム」として『友だちの顔を描いてみよう』を開発した。内容は、生徒同士(二人一組)で対話をしながら、相手の「顔」を描き、自己理解・他者理解を深めるものである。また制作物を提示しつつ、双方のよさを発表することで、仲間のよさを共有し合える取組でもある。複数時間(2時間)扱いで構成し、制作・鑑賞・ふりかえりの時間を十分に確保した。制作の中身が美術科の単元にあたるが、学級活動の取組として位置づけ、活動内容に工夫を加えた。 今回は2学級を対象に授業実践を行い、授業評価の評定値は4.2(設問数7,5段階)、生徒からは、「自己開示が促され、自己理解・他者理解を深めることができた」との自由記述を複数得た。このことは「顔」を描く活動と同時に自由な語らいを認めることで、自己開示が促されたとを示している。同時に、他者への新しい気づきももたらされた。生徒の立場からすると、仲間と自由闊達に語り合える機会と場は少なく、本取組を通して「自分では気づくことができていない自らのよさ」、「これまでに気づけていない仲間のよさ」について、新たな気づきを深め、引いては自尊感情を高めることができた。加えて『教育相談のための綜合調査Σ』や各心理検査を用いて、生徒の心理的な変容効果についても分析・検討した。 生徒一人一人を望ましい関係性を構築するうえで、授業実践を行った学級の実態について、落ち着きの視点に立つと課題を多々抱えていたにも拘わらず、自発的・実践的な取組として最後まで展開できた。このことから一定の汎用性のあるプログラムとして位置づけられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
いじめの未然防止を図るプログラムを開発するにあたり、これまでにC県D市の公立小学校において「朝の会」、「終わりの会」における学級担任の逐語記録に基づき、児童への指導・支援に効果的な要素に分類した。複数の調査結果を踏まえ、共通する要素を抽出し、新たに開発するプログラムに組み入れる構想をした。 児童生徒の実態を問わず汎用性の高いプログラムの開発をめざして、「制作(描画)・鑑賞」を組み入れ、新たに研究分担者として蜂谷昌之氏(広島大学大学院教育学研究科)を加え、美術科教育の視点から知見を得ることで、研究を速やかに進めることができた。 本年度は開発した「いじめ未然防止プログラム」を用いて、A県B市の公立中学校において授業実践を行った。その教育効果については、生徒の制作物や自由記述、逐語記録、授業評価アンケートなどの資料をもとに、良さと課題の両側面から分析・検討を進めた。汎用性を高めるために、指導者が本プログラムを進める際に、課題を抱える生徒らに対してどのような関わりができたのか、一方それに対する生徒の受け止め方に着目した。加えてねらいを達成するために、手立ての一つとして制作を効果的に機能させる方途についても検討した。本授業実践から得た知見を踏まえつつ、本プログラムの改善に取り組んでいる。 当初、研究計画に提示した基礎資料はもとより、学校教育現場での学級担任による音声記録、本プログラムを用いた授業実践から得た資料(データ)の収集、およびその考察に至るまで、おおむね順調に進展している。定期的に研究分担者との打ち合わせを行い、本プログラムの実践結果に着目した分析・検討、および考察を深めている。また、協力いただいている公立中学校の学級担任および学年団の先生方との打ち合わせ、聞き取り、研究協議等の時間も十分に確保し、相互間での共通理解を図りながら進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の授業実践を通して得られた資料に基づき、再度、「いじめ未然防止プログラム」を改善する。実施対象校の生徒の実態の影響が少ない、汎用性の高いものをめざす。さらに可能であれば、複数校を対象に授業実践を行い、得られた資料に基づき分析・検討、および考察を加える。また、「制作(描画)・鑑賞」のスタイルに加え、新たに効果的な活動内容を組み入れたプログラムの開発にも取り組む。 授業実践から得た資料に基づき、いじめの未然防止を図る取組として、「自己理解・他者理解を深めることで自尊感情を高める」視点に立ち整理する。またこれまで本研究に関して得られた資料と照合させながら、研究成果としてまとめる。作成にあたり、研究分担者および協力していただいた授業担当者とも意見交換を行い考察を深める。その際、本プログラムを含め、いじめの未然防止をめざす取組の可能性と限界についても議論する。 なお、プログラムの汎用性を高めるために、授業実践を重ねつつ改善を加えるとともに、教員研修等の場を介してその普及に努める。その際、活動内容は、ねらいに到達するための一手段に過ぎず、児童生徒に自己理解・他者理解を深め自尊感情を高めるうえでの成否に関わり重要な役割を担うことを伝える。
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Causes of Carryover |
「いじめ未然防止プログラム」の開発及び授業実践を進めるにあたり、新たに研究分担者として蜂谷昌之氏(広島大学大学院教育学研究科)を加え、協働し合いほぼ実施計画通り進められている。また、学級の実情に関する調査についても、アンケート等を終えている。 次年度使用額から研究分担者への配分額を差し引くと、次年度使用額は少額であり、研究はおおむね順調に進んでいる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「いじめ未然防止プログラム」の授業実践を通して、その成果と課題について、研究分担者等との打合せの場を設け、丁寧に意見交換を行い、汎用性の高いプログラムとして改善を加える。分析・検討のうえ考察した内容、および資料を合わせて報告書にまとめる。 また、いじめ問題に関する情報収集に努め、中央教育審議会「いじめ防止対策協議会」等の傍聴など、今後の施策の方向性への理解を深めながら本研究に取り組む。
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Research Products
(4 results)