2014 Fiscal Year Research-status Report
知的・発達障害者のソーシャルインクルージョンを実現するカリキュラムモデルの構築
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25381293
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
米田 宏樹 筑波大学, 人間系, 准教授 (50292462)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 共生社会・インクルージョン / 知的・発達・重複障害教育カリキュラム / 学習困難 / 知的障害 / 通常教育カリキュラム |
Outline of Annual Research Achievements |
英国,米国,日本における特別支援教育カリキュラム論史について検討を行った。英国についてはナショナルカリキュラムの導入・展開に関する資料の収集・分析を,米国についてはコモン・コア・スタンダードに基づく学習内容の設定と学習成果の評価に関する資料の収集・分析を,日本については生活単元学習等の領域・教科を合わせた指導形態や知的障害教育教科生成に至る過程に関する資料の収集・分析を行った。 これらの研究作業の結果をもとに,日本や米国との比較を今後の念頭に置いたうえで,特に英国の特別支援教育カリキュラムについて,重点的に検討・考察を加えた。 具体的には,過去20年間に公表された学術論文,10編を分析することにより,英国における知的障害児へのナショナルカリキュラムの適用の現状と課題を考察した。 学習困難児の教育におけるナショナルカリキュラム履行上の課題は,教師集団の教科に関する専門性の確保と個々のSENに応じたカリキュラムの柔軟性の確保であった。一方,評価方法については,ナショナルカリキュラムが求める水準に達していない児童生徒の学習到達度を評価する手段として開発されたPスケールが挙げられ,その評価の一貫性が課題として指摘された。卒業時の資格・教育証明という点では,義務教育修了一般証明書の最低基準に満たないと考えられる重度の学習困難児の義務教育修了証明のあり方が課題となっていた。 障害程度や学習段階にもとづくカリキュラム編成手続き状の実際や課題については,英米日で,類似する点があるように思われた。なお,通常教育スタンダードに基づいた教育内容の提供,すなわち通常カリキュラムへのアクセスが,学習困難・知的障害児の「自立と社会参加」へ寄与するのかについては,さらなる情報収集と分析が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
通常教育教科第一学年以前の内容を教科の枠組みで示し、行動的理解で評価するというような対応やより未分化な段階の児童生徒に対して未分科な内容を指導することに関して、日英米のカリキュラム構造の類似点や相違点について比較検討するめどがたってきたことから、今年度のカリキュラム論史研究には一定の成果があったと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
特に日本の知的障害児に対する教育カリキュラムの編成と授業展開の実際について、生活教育が軽度・中度児を中心に展開される時期、中度・重度児へと対象が推移していく中で、各教科の内容を合わせて指導するというよりも各教科内容以前の段階の内容で未分科となっていく時期、現在の特別支援学校と通常学校特別支援学級における対象児と各教科の内容の捉えについて、教科論・内容論の観点から資料の分析を試み、その結果と英米のカリキュラム・授業展開とを対照するようにしたい。
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Causes of Carryover |
資料実地調査の実施日程等に関する調整の結果、当該年度内の実施では十分な成果が見込めないことから、一部を史資料の購入やインターネット経由の情報収集に振り替え、実地調査を次年度での再調整としたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実地調査による活動内容を精査し再調整したうえで、実地調査を行うとともに、研究成果の公表(英文・和文誌への論文投稿、学会発表)の費用としても効果的に使用する。
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