2014 Fiscal Year Research-status Report
知的障害児の問題解決における仲間との相互作用の特徴とその援助に関する基礎的研究
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25381303
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
渡邉 雅俊 國學院大學, 公私立大学の部局等, 准教授 (40367602)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 仲間との相互作用 / 協働関係の形成 / 知的障害のある生徒 / 作業学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の2年目にあたる本年度は,1年目の研究成果をふまえ,本調査の実施とデータ分析,及び分析結果の公表を行った。1年目に実施した文献による研究課題の整理と予備調査から,当初計画していた実験的操作によるデータ収集について変更し,日常的な場面を対象にすることが望ましいと判断した。そこで,本年度の調査では,特別支援学校(知的障害)高等部における作業学習を分析対象に選定した。調査は,概ね1,2学期間に渡って知的障害のある高等部3年生の2名(A,B)を縦断的に記録した。この2名は,同級生の男子である。A(精神年齢 : 5歳8ヶ月)は,対人関係は良好で適応的な学校生活を送っているが、内向的な性格と声が小さい等の特徴を有し、他者とのコミュニケーションに苦手意識を持っていた。B(精神年齢 : 6歳4ヶ月)は、特別支援学校中学部から同校高等部へ進んだ。穏和な性格で、丁寧かつ真面目に学習へ取り組むことができる。その一方、Aと同様に内向的な性格傾向があり、自発的に他者と関わったり、集団へ参加したりすることはあまりない。彼らは,2年生まで単独で行ってきた作業を3年生1学期から、その一部について互いに連携することになった。その期間の作業遂行と相互作用を分析した結果、連携ルールに従って,安定的に作業を進められるようになり,両者は協調しながら効率的に作業できるようになったことが示された。このような協働関係の形成の主たる要因として互助規範の産出と適応が推察された。また、その支援について仲間意識を促し、相手の作業状況にも注意を向けるようにすることと、相手を助けることの効力を理解させることではないかと推測した。今後,この知見に基づき,協働関係の形成を支援する実践的な取り組みを行い,その効果を検証することが研究の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り,予備調査の成果に基づいて本調査を実施することができた。この研究成果を学会発表し,論文を作成することができた(現在,投稿中である)。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,研究計画の最終年度であるため,本年度に実施した研究成果から研究課題を精査したい。現在のところ「協働関係の形成機序の補足的研究」,「協働関係の形成支援の実践的研究」のいずれかを選択する予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画では,実験的操作によるデータ収集を予定していた。そのため、当初は実験やデータ分析の補助に係る人件費や謝金を支出することになっていたが、授業観察によるデータ収集に変更したので不要となってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまでの研究成果を整理し、新しい研究課題を検討するための文献資料の購入費と,データ分析に用いる機材とソフトウエアを購入する予定である。
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Research Products
(3 results)