2013 Fiscal Year Research-status Report
重症心身障害児の主体的行動を促進する物理的環境の解明
Project/Area Number |
25381312
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
苅田 知則 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (40363189)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樫木 暢子 愛媛大学, 教育学部, 講師 (10635858)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 重症心身障害児 / 物理的環境 / 主体的反応 / 刺激周波数 / S/N比 |
Research Abstract |
重度の知的障害と重度の運動障害を併せ持つ重症心身障害児(以下,MID児)は,両障害の程度が極めて重く,異常緊張性反射活動等により主体的行動が制限されてしまう。MID児は,支援がなければ能動的に運動を企図し環境と相互作用することが困難であり,更に身体運動や認知の発達が停滞・遅滞する危険性が高まる。異常緊張性反射活動は精神的負荷によって増大するが, MID児にとって精神的緊張を低減する環境においては,MID児の主体的行動が増加することも知られている。 申請代表者は,MID児の主体的行動の参与観察や,その際の生理的ストレス反応の測定を通して,ストレス低減が示唆された環境は,雑音(Noise)が少なく,快感情を誘発する刺激(Signal)の提示頻度が低い(S/N比が高く,提示刺激の周波数が低い)特徴を持つという仮説を提唱した(苅田,2011)。 平成25(2013)年度は,苅田(2011)が提唱する「MID児のストレス低減に環境特性が及ぼす効果モデル」に基づき,アクションリサーチを行い,環境のS/N比と刺激の周波数を操作しつつ,MID児の主体的行動と生理反応等の関連について検討を加えた。 3名のMID児を対象に,高S/N比環境における主体的行動を観察した。iPadに興味を示すMID児においては,操作と画面反応が一対一になっており,刺激の周波数が低いアプリにおいて主体的行動が増加した。また,刺激に対する過敏さのあるMID児に対して,視覚刺激を少なくし,眼前でゆっくりと移動させたところ,追視や上肢による操作が観察された。 生理反応等の測定においては,唾液アミラーゼ測定装置(ニプロ社,唾液アミラーゼモニター),心拍による自律神経測定装置(WINフロンティア社,マイビート)重度障害者用行動記録・解析システム(東京大学,OAK)によるビッグデータ測定が可能であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り,アクションリサーチを実施し,主体的行動を測定する指標を作成するとともに,フィールド調査において測定可能な生理反応測定装置を選定することができた。これらの研究成果は,学術論文1編(審査中),学会発表2編として発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26(2014)年度には,少人数のMID児への実験的介入を行う。平成25(2013)年度のアクションリサーチによって得られた結果から,モデルの検証に適した高S/N比環境と低S/N比環境を選定する。また,周波数(提示頻度)を操作的に変化させることができるように刺激提示装置(玩具等)を調整する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究分担者の樫木暢子講師が,重症心身障害児者病弱児を対象としたプロジェクトを起ち上げるために非常に多忙であり,担当する予定であった東京都での調査打ち合わせと調査準備が延期になったため。もっとも,樫木講師が担当する予定だった上記計画は,平成26年度に予定している実験的介入に向けた準備であったため,平成25年度の計画に遅れ等の影響は出ていない。 樫木暢子講師が担当していたプロジェクトは,平成25年度で立ち上げが終わり,平成26年度については平成25年度の予定と併せて当該年度の予定を遂行する予定である。
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Research Products
(2 results)