2014 Fiscal Year Research-status Report
ASD児への養育者による日常的なコミュニケーション支援のための語用論的能力の解析
Project/Area Number |
25381320
|
Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
伊藤 恵子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (80326991)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 発達障害 / 語用論 / 養育者 / 日常的支援 / コミュニケーション / ASD |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては、自閉スペクトラム症(ASD)児の生活の質(QOL)向上を目指した養育者によるコミュニケーション支援を行うために、日常会話におけるASD児の語用論的能力の特徴の把握と、その関連要因の解明を行うことを目的とした。この目的を達成するために、平成26年度は、以下の研究を実施した。 1.平成25年度に収集した自然発話データの分析:言語発達段階で統制したASD児と定型発達(TD)児各2名における動詞の項の省略と語彙化、及び非言語情報に関して分析を行った。その結果、ASD児、TD児とも、De Bois(1987)の提唱する「好みの項構造の制約」と一致した言語パターンを示し、ASD児が言語においては、情報を提供する構造や談話の語用論的な制約に対する感受性をTD児と同様に有するということが示唆された。しかし、非言語情報に関しては、ASD児はTD児に比べ、指示詞発話時に、有意に少なく使用しており、非言語情報を対象特定のために有効に活用しないということが見出された。 2.上述の結果を受けてのASD児の非言語情報処理に関する実験:ASD児19名、TD児14名に対して、発話者の意図を理解する際、状況・声のトーン・表情といった非言語情報のどの部分に、どのように着目するかを検討することを目的として、映像を用いた実験を実施した。 3.養育者におけるASD児への日常的コミュニケーション支援への助言:平成25年度に把握した、ASD児へのコミュニケーション支援に関する養育者のニーズに対して、これまでの研究によって得られた知見に基づいた日常的で具体的な支援に関して助言を行い、養育者と情報の共有を定期的に行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究当初の目的は、以下の4点であった。 1)ASD児の養育者におけるコミュニケーション支援に関するニーズの把握。2)日常会話の詳細な分析によるASD児の語用論的能力の特徴とその関連要因の解明。3)かかわり方の相違がASD児の語用論的能力へ及ぼす影響の検討。4)生活の質(QOL)向上を目指した養育者による日常的コミュニケーション支援への適用。 上述の目的のうち、1)、2)、4)は、おおむね順調に進展している。しかし、「3)かかわり方の相違がASD児の語用論的能力へ及ぼす影響の検討」に関しては、ASD児と母以外の他者とのかかわり場面のデータを適切に収集することが、なかなか困難であるため、データ収集が遅れている。 なお、「2)日常会話の詳細な分析によるASD児の語用論的能力の特徴とその関連要因の解明」に関しては、ASD児の語用論的能力の関連要因として、非言語情報処理に着目し、このことに関する実験も進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究当初の目的のうち、「3)かかわり方の相違がASD児の語用論的能力へ及ぼす影響の検討」に関しては、ASD児と母以外の他者とのかかわり場面のデータを適切に収集することがなかなか困難であるため、データ収集が遅れている。そのため、引き続き、データ収集に努める予定である。 また、「2)日常会話の詳細な分析によるASD児の語用論的能力の特徴とその関連要因の解明」に関しては、ASD児の語用論的能力の関連要因として、非言語情報処理に着目し、このことに関する実験も進めている。しかし、ASD児の対照群としてのTD児の研究協力者の人数が十分ではないので、引き続きTD児の研究協力者を募り、実験を進めていく予定である。
|
Causes of Carryover |
研究当初の目的のうち、「3)かかわり方の相違がASD児の語用論的能力へ及ぼす影響の検討」に関しては、ASD児と母以外の他者とのかかわり場面のデータを適切に収集することがなかなか困難であったため、データ収集が遅れた。そのため、データ入力及び解析にかかわる費用が次年度に生じてしまった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記目的(かかわり方の相違がASD児の語用論的能力へ及ぼす影響の検討)に関して、引き続き、データ収集を行い、解析を行っていく予定である。
|