2015 Fiscal Year Annual Research Report
ASD児への養育者による日常的なコミュニケーション支援のための語用論的能力の解析
Project/Area Number |
25381320
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
伊藤 恵子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (80326991)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 発達障害 / 語用論 / 養育者 / 日常的支援 / コミュニケーション / ASD |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉スペクトラム症(ASD)児の生活の質向上を目指した養育者によるコミュニケーション支援を行うために,日常会話におけるかれらの語用論的能力の特徴の把握とその関連要因の解明を行うことを目的として、以下の研究を実施した。 平成26年度は、ASD児と定型発達(TD)児における動詞の項の省略と語彙化、及び非言語情報に関して、平成25年度から収集した自然発話データの分析を行った。その結果、ASD児は表出言語において、情報を提供する構造や談話の語用論的な制約に対する感受性を、TD児と同様に有するということが示唆された。このことは,普通の会話や一見正しく見える伝達行動(大井, 2002)と見なされ,ASD児のコミュニケーションの問題を過小評価してしまう危険性をはらんでいる。しかし、非言語情報に関しては、ASD児はTD児に比べ、非言語情報を対象特定のために有効に活用しないということが見出された。 上述の結果を受けて、ASD児18名、TD児13名に対して、非言語情報処理に関する実験を実施した。これは日常場面に近い映像を通して,非言語情報の異なる各言語的意味から、ASD児が話者の発話意図をどのように理解しているかを調べるものであった。平成27年度は、この実験で得られたデータの分析を行った。その結果、話者の発した言語的意味と話者の発話意図の異同に関しては、ASD 児,TD児ともに正しく理解していた。しかし、ASD児,TD児ともに話者の発話意図の賞賛と叱責に関しては、正しく理解している者が多かったが、冗談と皮肉に関しては理解が困難であった。実験結果に関しては、ASD児とTD児間に差異は認められなかったが、非言語情報の処理に関するさらなる検討が必要と思われた。 研究期間を通じて得られた知見に基づいた日常的で具体的な支援に関する助言を行い、定期的に養育者と情報の共有を行った。
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Research Products
(4 results)