2015 Fiscal Year Research-status Report
吃音のある子どもの自己肯定感形成に向けた教員と保護者の協働支援プログラムの開発
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25381338
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Research Institution | National Institute of Special Needs Education |
Principal Investigator |
牧野 泰美 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所, 教育支援部, 総括研究員 (80249945)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 吃音 / 吃音受容 / 吃音理解 / 自己理解 / 自己肯定感 / 情報提供 / 協働 / 啓発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度に引き続き、吃音について教員が保護者に情報提供すべき内容や教員の保護者支援の在り方についての検討を進めるとともに、とりわけ、吃音のある子どもの自己肯定感を育むために教員と保護者が取り組める活動及び保護者が子どもと共にできることについての実践的検討・整理を中心に取り組んだ。 具体的には、各地の言語障害通級指導教室等の保護者学習会の内容の収集・整理及び実践的検討、各地の言語障害通級指導教室等において子どもと保護者が一緒に行っている吃音キャンプ等の内容の収集・整理及び実践的検討を行った。 これらの検討を通して、吃音のある子ども同士の活動として、吃音を意識した時期、自分の吃音の特徴、様々な経験・エピソード、苦手な言葉や場面に遭遇した時どうしているか等についての情報交換、吃音に関する相互の気持ちを話し合う取組、自分の気持ちを文章にする取組、表現・創作活動等の取組が自己の吃音と向き合うことを支える上で効果的と考えられた。また、保護者同士の取組として、成人吃音者や先輩保護者の話を聞く、吃音のある子どもを巡る日常の出来事に対する対処法についての情報交換、吃音に対する考えについてのディスカッション等が多く行なわれており、吃音に対する思いを語り合うことが重要と考えられた。保護者の安心感を支えることは重要であり、社会人として生活している吃音者に関する情報を提供していくこともその一助となることが示唆された。 教員と共に親子で取り組める事項として、自分のことを他人に伝えるための紹介文等を一緒に考えるといった活動が有効と考えられた。その他、吃音のある子どもが、自己や吃音に関する思いを教員や保護者との対話によって変化させていく取組、自己や自己の吃音を再解釈していく取組、否定的な思考から肯定的な思考に変換する視点を探していく取組等について、いくつかの実践を蓄積することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画における、言語障害通級指導教室、吃音のある子どもの保護者、成人吃音者からの資料・情報収集、各地の言語障害通級指導教室の保護者学習会の内容、研究会・当事者団体等が行う学習会の内容、各地の言語障害通級指導教室担当教員を中心とした研究会や当事者団体が主催する、子どもと保護者が共に集う吃音キャンプ等の実践内容についての資料・情報収集とその整理・考察が概ね遂行でき、そこから得られた知見を、いくつかの保護者会や吃音キャンプにおいて実践的に検討することができた。ただし、吃音のある子どもの自己肯定感を育むために、教員が保護者に情報提供すべき内容や、教員と保護者が共に取り組める活動内容の最終的な整理にまでは至っていないことから、概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に検討・考察を進めた、吃音のある子どもの自己肯定感を育むために、教員が保護者に情報提供すべき内容、教員の保護者支援の在り方、教員と保護者が共に取り組める活動について、言語障害通級指導教室の保護者会や、吃音のある子どもとその保護者が集う機会を利用して実践的検討を重ね、有効性を実証する。また、これらの成果を、主に言語障害通級指導教室担当教員の参考となる実践ガイドとしてまとめる。 以上の推進については、これまでの研究活動を通して構築してきた言語障害通級指導教室担当教員や保護者団体、当事者団体のネットワークを活用して協力を得るとともに、研究協力者との連絡・協議を密に行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、予定していた旅費の支出に対して、訪問予定の言語障害通級指導教室や親の会、研究会等について、本研究活動以外に訪問する機会があり、その折に資料収集や検討を進めることができ、本研究における旅費を使用しない状況が生じたこと、同様に、研究協力者との打ち合わせについても、研究会等に同席した折に実施できた等、旅費を使用しない状況が生じたこと、さらに、格安航空券の利用により、予定より支出が抑えられたことが挙げられる。 また、研究代表者が資料収集・整理を進めたことで、資料整理謝金の支出が不要になったこと、購入予定の文献が在庫切れ、絶版等により購入できなかったことも挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、これまでに検討してきた知見の有効性を実証するため、研究協力者と連絡・協議しつつ、言語障害通級指導教室の保護者会や、吃音のある子どもとその保護者が集う機会を利用して、実践の蓄積と検討を重ねる計画である。また、成果をまとめ、言語障害通級指導教室担当教員の参考となる実践ガイドを作成する予定である。 これらの計画を遂行するため、旅費、資料整理・分析・保存、関係者との協議・意見交換・通信、印刷等に使用する計画である。
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